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第二十九話 「次なる舞台はナーシングホーム!?」

 僕は金本たちがいる教室に、走りながら向かっている。


 ーー実はイベントライブを見た人から電話があって、ぜひライブをして欲しいと連絡があったんだよ。


 山本先生からそう聞いた僕は、そのことを知らせに急ぐ。


「どうせ、教室で荒木先輩たちとアニメの話をしているだろ!」


 部室が使えない今、彼らが集まるのは自分の教室だろう。教室に着いた僕は、勢いよく扉を開ける。


「おや、岩崎君。どうしたんだ? そんな息を切らして」


 中に入るなり、金本が僕にそう話しかけてくる。


「あ! さては君も、会話に混ざりたいのだな? 今はちょうど新作のギャルゲーについて話していたところなんだ」


 金本は雑誌を読みながら、手招きをしてくる。


「はあ、はあ。そんなことより……」


 僕は山本先生から聞いた話を金本たちに伝える。


「ええ! またライブをやるのかい?」


 金本はおどろくと、そうさけぶ。


「それはギャグかい? あれだけ失敗をしたライブをやったのに」


 僕もそれは考えたが、山本先生が言うのだから間違いないだろう。


「けど、今は活動停止中だろう? やりたくてもできないじゃないか」


 ーーそうだ、 部活はできないんだった。


 僕はすぐに落胆する。


「まあ仕方ない! お断りをして、新しいギャルゲーの曲を調べようではないか!」


 金本は意気揚々に、また雑誌を読み始める。


「おー! ここにいたのか、探したぞ」


 山本先生が教室に入ってくる。


「岩崎、話はまだ終わってないだろ? 勝手に走り去っていくなよ」


 先生はそう言うと、一枚の紙を取り出す。


「おまえに渡し忘れていたよ。電話をかけてきた人の連絡先だ、詳しい話はおまえが連絡しなさい」


 紙を受け取り、中身を見る。


「へ? 本当にここで演奏するんですか?」


 書かれた場所を見て、僕はおどろいた。


「岩崎君、どこでやるんだ? また商業施設かい?」


 気になるのか、荒木はそう尋ねる。


 紙を荒木に手渡すと、金本たちも集まる。


「老人ホーム、ひながわ?」


 連絡先にはそう書かれている。


「なんで老人ホームなんだ! 僕らはギャルゲーとかの曲をやるんだぞ」


 意味がわからないと言わんばかりに、金本はそう口にする。


「いいじゃないか、バンドで演奏して欲しいって言ってもらえるんだからさ」


 山本先生はそう僕らにそう言うも、全員は微妙な空気になっている。


 ライブができるのは嬉しいが、お年寄りにギャルゲーソングを聴かせていいものか。


「というか…… おじいちゃん、おばあちゃんにエレキギターとかの音って悪くないか?」


 和田は疑問を僕らに投げかけた。


「確かに、うるさくて心臓とか止まったりしそう」


 荒木はそう答える。


 ーーどういう目的で僕らに演奏を頼んだんだ?


 僕はまずそこが、わからずにいた。


「グダグダと考えていても仕方ないだろう? 今回は私も同行から安心しなさい」


 そう言って山本先生は、教室を後にする。


「せっかく、新作のギャルゲーソングをみんなで語りたかったのに」


 金本は残念がって、椅子に座り込んだ。


「アニソン、ギャルゲーソングをいろんな人に知ってもらうんでしょう? 若者も年寄りも関係ないのでは?」


 僕は金本にそう話しかけた。


 お年寄りは最近の音楽を好まないとよく聞くが、それを変えることもできるはず。


 そういうこともしていくのが、この同好会がすべき活動ではないかと思ったからだ。


 僕の言葉を聞いた金本は、少しおどろいた顔をしている。


「意外だなあ、岩崎君がそんなことを言うなんて」


 すると金本は、読んでいた雑誌を机に置く。


「よかろう! ならば年寄りを相手に、ギャルゲーソングの良さを知ってもらおう!」


 先ほどまでやる気がおきていなかった金本が奮起する。


「まずは活動停止が解除されるまで、どんな曲をやるかを会議しよう」


 こうして、僕らは再びライブをやる計画を立てるのだった。


 次の日から学校が終わると、近場にある喫茶店に集まる。


「あの…… なんでわざわざ喫茶店に来るんですか?」


 僕は疑問に思ってそう尋ねる。


 入った店内は僕が知っている喫茶店ではなかった。


「なにって、普通の喫茶店だろう?」


 チラッと店内に目を向ける。


 壁にはアニメキャラのポスター、店内から流れてくるゲームソング。


 来ている客はみんな、金本のような見た目をしている。


「いやいや、普通じゃないでしょう! 明らかにおかしいですよ」


 そう思った僕は、金本たちに話す。


 金本たちはピンと来ないのか、頭をかしげている。


「とにかくだ! 老人ホームでの演奏をどうするか考えてようではたいか!」


 金本が高らかに宣言すると、最初にドリンクを注文する。


 ドリンクが全員に行き渡り、バンドで演奏する曲をどうするかを話し合うことになった。


「この前にやったような曲調は、やっぱりダメだろう? うるさいだけだし」


 荒木はジュースを飲みながら、自分の意見を言う。


「そっ、そうだよな。やっぱり、お年寄りに合うような曲にしないと」


 岡山の言う通り、年代に合わせた曲を選ぶべきだろう。


 ーーけど、お年寄りが好む曲ってなんだろう?


 想像がつかないことに、僕は少し悩む。


「やっぱり、昔ながらの演歌とかですか?」


 僕は適当にそう言ってみる。


「演歌……」


 それはないだろうと、全員が微妙な顔をしている。


 さすがの金本たちも、演歌はしたくない様子だ。


「まあ……さすがに演歌はないですよね、まずギャルゲーに演歌とかあるわけないし」


 僕はそう話を切り替えてると、金本は小さくつぶやく。


「あるよ、演歌」


 金本の言葉に荒木たちはうなずく。


「あるんですか? 演歌ですよ、ギャルゲーにあるわけがないですよ」


 おどろいた僕はそう言うのだが、金本たちの表情を見ると本当にあるらしい。


「まあ裏社会的な設定のギャルゲーだけど、あるにはあるよ」


 ーーどれくらいの設定があるだよ……ギャルゲーって。


 僕はまだ、ギャルゲーというものを知らなすぎるのかもしれない。


「とにかく、別の曲を考えよう!」


 いつもの金本ならば、ここでギャルゲーの内容を熱く語るのだが様子が違う。


 まるでこの話はしたくないように見える。


「金本はそのギャルゲーをプレイして、軽くトラウマになったらしいよ」


 隣に座っていた和田が僕にそう耳打ちをする。


「実は内容がね…… ごにょごにょ」


 和田からその内容を聞いた僕は、気分が悪くなる。


 ーー聞かなければよかった。


 僕は注文したドリンクを、一気に口へと流し込む。


「ええい! その話は終わりだ、それよりも僕はこの曲がいいと思うんだ」


 金本はテーブルの上にギャルゲーのソフトを置く。


 パッケージを見た僕は、目を疑った。

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