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「生徒会長は静かに暗躍す」

番外編の一つ。


あまり意味をなさないであろう、番外編をまたまた投稿しました。



 ここは静けさが漂う、生徒会室。


「ふむ、今日もおだやかな日じゃないか」


 新しく生徒会長になった僕、須藤はじめは窓の景色を見ながらそう口にした。


「会長、そろそろ各部活の要望書への確認をお願いします」


 僕は書記の生徒に言われ、椅子に座った。


「ふむ、今日はやけに多いな」


 この学校では、部活動の要望が毎日のように届く。新しい部活や同好会の申請、部活動の備品の購入など様々だ。


 机に並べられた大量の紙を前に、僕はおどろいた。


「どれどれ、とりあえずは見てみよう」


 一枚ずつ目を通して、承認するものにはハンコを押す。


 今回は、新しい同好会の申請がやけに多い。


 部室の空きが関係するため、必要のない申請書には却下をする。


 近頃は適当に同好会を作って、たまり場にする生徒が多い。


 僕は申請書に書かれている内容を慎重に確認をする。


 その中に、気になるものを見つける。


「ふむ、音楽研究同好会?」


 あまり聞きなれない同好会名に僕は、書かれている内容を見る。


 ーーあまり需要がない音楽のジャンルを、もっと広めるために活動していきたいです。


 そう最後に書かれていた。


「確かに、自分が知らない音楽を発見できることは良いことだ」


 僕もクラシックをたしなんでいる。


 あの温かみのある音色、おだやかな気持ちにさせる名曲たち。


 素晴らしい音楽のジャンルだ。


 だが僕の周りには、それを好む人はいない。


 友人は流行のアイドルやバンドの曲を聴いては盛り上がっている。


 正直、僕はそういう音楽が好きではない。


 特にアニメなどの、低俗な音楽が嫌いだ。

だが、人それぞれの好みがある。


 それでも、クラシックギターの曲も良いものだと知ってもらいたいと、日頃から思っていた。


「しかし、具体的にどのような音楽を広めるかは書いていないようだな」


 そう考えながら見ていると、詳しい内容が書かれていないことに気づく。


 おそらくクラシックの音楽や、古い音楽を広めたいということだろう。


「ふふ、面白い同好会だな。よし、認可しよう」


 僕は書類にハンコを押す。


 まだ見ぬ音楽と、是非とも出会って欲しいものだ。


「音楽研究同好会か…… 健闘を祈る」


 承認した後日、僕は音楽研究同好会の代表者を呼ぶことにした。


「こんにちは! 金本です」


 僕の目の前には、想像していた人物とは違う生徒がいる。


 ーーてっきり、知的な生徒だと思っていたのだが……。


 見た目が明らかに他の生徒ととは違う。


 髪の毛はボサボサのおかっぱ、よくわからない革の手袋。


 そしてなにより、白いワイシャツから透けるアニメのキャラが写るシャツ。


「本当に君がこの同好会を立ち上げたのかね?」


 僕は本当に彼がそうなのか尋ねた。


「はい! 僕が作りたくて、友達を誘って立ち上げました」


 金本はそうヘラヘラ笑いながらそう答える。


 ーーふむ、まあ他の生徒よりはマシだろうか。


 彼以外にも、僕は何人かの生徒を同じように呼び出していた。


 他の生徒はただ教室を借りて、暇つぶしに使うといった目的が多い印象だった。


 それに比べ、彼は真面目に部活動をしそうだと思う。


「ところで、 同好会の具体的にどのようなことをするかを聞いてもよいかね?」


 私が話を変えてそう聞くと、彼は待ってましたという感じで話し出す。


「よくぞ聞いてくれました会長! 僕はですね! 日頃からずっと考えてたんですよ」


 今の音楽は単純な人気取りしかしない、もっと世に出ていい曲やジャンルがあると語っている。


 僕は黙って彼の話を聞くわけだが、どこか説得力があるように感じた。


「ですから、僕らは……」


 彼が最後に言いかける前に、僕はこの同好会を設立することを決めた。


「結構、よくわかった。実にいい同好会だと思う、同好会を認めよう」


 僕がそう話すと、金本は喜び出している。


「後日、同好会を正式に登録しよう。部室だが……」


 僕は空きがある教室が書かれているファイルを手に取る。


 誰も利用していない教室を探すと、使われていない教室が一つがあった。


 ーー確か軽音学部が、この教室を使いたいと、申請が来ていたな。


 人数が多い軽音学部だが、しばらくは音楽室で大丈夫だろうと僕は考える。


「部室は校舎の二階を使ってくれたまえ、一番奥だ」


 話が終わり、金本が生徒会室を出る。


 僕は学校に提出する書類を作成する。


「会長、本当に良かったのですか?」


 先ほどのやり取りを見ていた書記の生徒が僕に話しかけてくる。


「ああ。問題を起こすような生徒でもないし、大丈夫だろう」


 音楽をたしなむ者として、僕は彼に期待をすることにした。


「この学校の生徒が、まだ知らない音楽を聴くようになればよいな」


 ーー数ヶ月後。


「これはどういうことだね?」


 僕は再び、金本を呼び出した。


 音楽研究同好会の活動報告書を見た僕は、金本にそう尋ねる。


「いやあ、なかなかうまくはいなかいもんですね」


 頭をかきながら、金本は答える。


 ーー素晴らしいアニメ、ギャルゲーソングの良さを人々に。


 報告書の概要に、そう書かれている。


 だが同好会設立後からの彼らがした活動報告は、あまりにもひどかった。


 金本はアニメ、美少女ゲームなどの音楽を学校で流したり、SNSを利用して情報を書き込むなどしていた。


「君たちが、今までにしてきたのはなんだったのかね? 僕はこのような活動のために同好会を認めたわけではない」


 僕の言葉に金本は笑いながら話す。


「いやだなあ会長! 僕は最初からアニメ、ギャルゲーの音楽を広めるために同好会を作ったんですよ」


 僕はどうやら間違いをしてしまったらしい。


 こうなるとわかっていたならば、この同好会など承認していなかった。


 僕自身、話を最後まで聞かず、勝手な判断で認めてしまったことを今になって後悔する。


「話は終わりだ……出ていきたまえ」


 もはやここで話をしても無駄だと思った僕は、金本を生徒会から出す。


「会長……」


 他の生徒会役員からの声に、僕はため息をはく。


「…… 生徒会の会議を始める」


 僕がそう話すと、副会長が議題はどうするかを尋ねた。


「音楽研究同好会の活動を今後、どうするかだ」


 ーーなにがアニメ、ギャルゲーの音楽を広めるだ! あのような低俗な音楽など。


 僕自身がしてしまった過ちを正すため、僕は決意する。


「あの同好会をつぶす」


 そう、生徒会の全権力を使ってでも。

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