「私?音楽研究同好会顧問の山本ですが!」
あまり意味のない番外編パート2でございます。
息抜きに書いたようなものなので、スルーしてくださって大丈夫です♪
私、音楽研究同好会の顧問、山本は部室へと足を運ぶ。
授業が終わり、放課後は生徒の部活動の時間だ。
「金本! 活動はどうだ? 相変わらず新作ゲームをチェックか?」
私は部室に入ると、中にいる金本にそう話しかける。
ーー金本、荒木、岡山、和田。
四人は二年生であり、最近になって作った同好会だ。アニメやゲームが好きな彼らは、作品の音楽の良さを広めたいという願いがあったらしい。
私自身、彼らと同じようにアニメやゲームは好きだ。
それこそ、人には言えないだろうジャンルをも好む。趣味が合う形で、私は同好会の顧問になった。
「はい! やはり、今月は新作が豊富ですよ! メーカーで買いをするか、絵師で買いをするか迷いますね」
金本は目を輝かせながら、雑誌を読んでいる。
「しかし、金本。そろそろ新入会員の方も考えなきゃいけないぞ?」
時期的に新一年生が、部活動に入部を探し出している頃だろう。同好会の規定人数は四人で、金本たちだけでもいいのだが、先を考えるとやはり新会員は必須。
私は金本に、なにか考えがあるか尋ねた。
「あー、そういえばそうですね。けど、入る一年生はいるのかなあ」
金本は腕を組みそう答えた。
「今のままでいいんじゃないか? 無理に募集しなくても」
和田は悩む金本に話しかける。学校には、似たような同好会が多々ある。
おそらく、みんなはそういう同好会に入るだろうと言いたいようだ。
「だが、おまえたちが三年生になって、引退したら同好会はなくなるんだぞ?」
私がそういうと、金本たちは笑い始めた。
「あははは! 山本先生、笑わせないでくださいよ」
笑いながら金本が話す。
「別に同好会がなくなったって構いはしないですよ、それまでには僕らの目的も達成されるでしょうし」
楽観的な考えをしている金本に私は落胆する。職員に戻った私は、どうしたものかと首をひねって考える。
「おや、山本先生。まだ残ってたんですか」
声をかけてきたのは、軽音学部の顧問だ。
ーーまた、嫌みでも言いにきたのか。
私はこの軽音学部の先生が苦手である。
なにかあれば同好会のことで、とやかく言うからだ。軽音学部とは、部室の件で少しごたごたがあった。
部活動が使用する場所は、生徒会の審査で決まる。
金本はどうやったのか、生徒会を説得して今の広い教室を手にした。
そのことが気に入らないのか、軽音学部の先生は私に執着してくる。
「同好会の新入会員について、どうするかを考えてまして」
私は冷静にそう話した。
「ふん!オタク臭い連中の同好会に入るような生徒がいるとは思いませんがね」
皮肉ったような言い方で、顧問の先生はそう吐き捨てた。
ーーいかんいかん。 こんなところでイライラしてはいけないな。
平常心を保ちつつ、私は適当に返事をする。
しばらくして、一人になった私はパソコンのキーボードを打ち込んだ。
「とりあえずは、募集の紙は作っておこう」
ーー次の日。
私が担当する一年生のクラスで、部活動の入部用紙を配る。
「各自は部活動の見学をした後に、この用紙を書いて入りたい部活に提出するように」
私がそう話すと、生徒たちはどこに入るか雑談を始めている。
ーーふふ、やはり最初はみんなどこにするか悩むよな。
そう思って生徒の様子を見る中、ある生徒に目がいく。
「がんちゃんはどこにするか決めた?」
山岸が隣の男子生徒に話しかけている。
「んなもん決まってんだろ! 軽音学部だよ」
ーー岩崎恭介か。
私は出席簿を見て、生徒の名前を確認する。
見た目からして軽音学部とは少し違うイメージのようだ。
「おっと、いかんいかん。見た目で生徒を決めては」
私はそう自分に言い聞かせると、教室を後にした。
ーー今日は新作ゲームの発売日だったな。
職員室に戻る途中、私はふと思い出す。
いい歳をした大人が、ギャルゲーとはいかがなものか。
数カ月前に私はそう考えていたが、やはり辞めることはできない。
教師になった今も、変わることがなく私はハマり続けている。
「ふう、今日の夜にでも買いに行こう」
職員に戻った私は、そう口にすると授業の準備を始める。
放課後になり、金本たちがいる部室に向かう。
同好会の募集ポスターは休み時間に貼り終えている。
「さて、同好会には新しい生徒が見学に来ただろうか」
同好会がある教室まで着くと、私は扉を開ける。
「金本、どうだ? 誰か見学に来た一年生はいたか?」
私は教室に入るも、金本たちしか来ていない。
「山本先生、来るわけないでしょう? 今さら」
アニメ雑誌を見ながら金本は私にそう答える。
「そうですよ、同じようにアニメ、ゲームの曲を広めたいってやつはいないんですよ! この学校には」
荒木は携帯ゲーム機をしながら、話す。
バタンと雑誌を閉じる金本が、ギターが置いてあるとこまで歩き出した。
「流行の曲しか聴かないんですよ! 世間は」
スマートフォンから流れるギャルゲーソングに合わせて金本はギターを弾く。
「こんなにも素晴らしい曲がたくさんあるのに! 知りもせず、批判しやがって」
軽快にギターを弾く金本はそう叫んでいる。
「おまえたちは楽器が弾けるんだし、それでアピールしたらどうだ?」
アニメ、ギャルゲーの曲をもっと知ってもらいたいならば、そういうやり方もあると私はアドバイスをする。
しかし、金本たちはあくまで曲を知ってほしいだけで、バンドのようなことはしたくないらしい。
インターネットでただ情報を書き込むだけでは、周りは振り向きはしないだろうに。
私はため息をつきながら、いつものように金本たちの様子を見ることにした。
「はあ、このままではダメな気がする」
翌日も私は職員室で、どうしたものかと悩んでいた。
最近の若者はよくわからない。よく耳にする言葉だ。
他の部活に一年生が入っている中、音楽研究同好会には誰も入る者はいなかった。
「そろそろ入部の締め切りも近いし、どうしたものか」
言うことは一人前だが、行動に移していない金本たちを変える要素はないだろうか。
そろそろ部活動が始まる時間になり、私は職員室を出て、部室に向かう。
「今日もまた雑誌を読んだり、楽器を弾いてるか、しゃべって終わりか」
廊下を歩いていると、岩崎が肩を落として歩く姿を見つける。
「岩崎、なにしとるんだ? おまえ」
私は岩崎にそう尋ねた。
岩崎は私に、軽音学部から入部を拒否されたことを聞かされた。
「先生、この学校って軽音学部しかないんですか? 音楽に関係ある部活とか」
そう聴かれたは私は、すぐに音楽研究同好会を思い浮かんだ。
しかし岩崎は軽音学部のように、バンドをやりたいのだろう。
そんな彼を、あの同好会に連れていっていいのかと私は少し考える。
ーーだが、できるなら新入会員は増やしておきたい。
しばらく考えた末、私は岩崎に話す。
「あるにはある……まあ、ついて来なさい」
私は岩崎を連れ、同好会が部室まで歩き出した。
まさかこの岩崎が後に、同好会を変えていくとは思っていなかった。




