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第一話 「岩崎くん、ギャルゲーやるってよ!」

 音楽研究同好会へ入会した僕は、初日なのにアニメを見ている。


おかっぱ頭こと、同好会会長の金本(かねもと)総一郎(そういちろう)は最初にこんなことを言っていた。


「まずはアニメを見て、みんなと仲良くなろう!」


 金本はパソコンにDVDを入れると、アニメが映り始める。四人は、歓声を上げてアニメを見ている。


 アニメなどに興味がない僕は、これがどう同好会に関係あるかわからなかった。


山本先生の話によると、僕しか新入会員はいなかった。


こんなくだらない同好会なら、僕は辞めることも考えていた。しかし、あの演奏を聴いたためか辞めれずにいる。


 ーーあれだけ演奏がうまいのだから、バンドだってしているはずだろ。


 そう考えた僕は、イライラした気持ちを我慢してアニメを見ることにした。アニメの内容は、魔法が使える少女が悪者と戦っているようだ。


「岩崎くん、どうだった? 面白かったかい? このアニメ」


 金本は見終わると、僕に感想を聞いてくる。


「つまらないというか......なにが面白いんですか? これ」


 半ギレしながら言うと、金本は腕を組む。


「うーむ、いきなりは難しいかな? けどオープニングの曲は定評があるんだよ?」


金本がそう説明すると、隣のやつらが話に割り込んでくる。


「たっ、 確かにそうだよな。内容もいいんだけど、アニメに使われてる楽曲もどれもいいんだよな」


 小太りの岡山(おかやま)健治(けんじ)と、髪を後ろに束ねた荒木(あらき)新一(しんいち)がそう話す。


「声優さんが歌うのはいいけど、なんか合わない感じもするぞ?」


 荒木がそう言うと、金本たちはうなずきながら談笑している。


 ーーアニメの曲なんて一部のオタクしか好きじゃないだろ? なぜ、そこまで盛り上がれるんだ?


 普段、僕は海外のロックバンドを聴いている。


 アニメの曲をあまり聴かない僕は、金本たちを理解することができなかった。


「僕は先輩らとバンドがしたいんですよ! オタクみたいに、アニメの曲を話したくて入会したわけじゃない!」


 僕は金本たちの会話を止めるように、同好会に入った目的を話す。彼らはそれを聞くと、大きな声で笑い始めた。


「わははは! 岩崎くん、この同好会でバンドなんてしないよ」


 金本は笑いながら話す。


「僕らは、あくまでアニメやゲームの曲をいろんな人に知って欲しいだけだよ」


 僕はてっきりアニメやゲームの曲を、バンドでコピーしてライブをする同好会だと思っていた。

 あくまでアニメ、ゲームの話だけをするだけの同好会だと知り、ガッカリする。


「まあ岩崎くん、そんな落胆しなくてもいいんじゃないかね? アニソンも捨てたもんじゃないよ?」


 金本はガッカリしている僕に話しかける。


「今日だって、 新入会員の君と仲良くなりたくてアニメを見せたんだから」


 ーー仲良くなんかできるわけないだろ。


 僕はオタクではないし、趣味が違う、そんな彼らと仲良くなれるとは思えなかった。


 そう考えていたら、だんだんと怒りが湧いてきた。軽音学部でやらかしたように、暴言を吐こうとした時。


「アニメやゲームの曲、馬鹿にはできないけどね」


 その様子を見ていたガリガリな眼鏡こと、和田(わだ)裕太(ゆうた)がそう口にする。


「黙って聞いていたけど、君はそういうジャンルに偏見を持っているね」


「そんなにバンドがしたければ、軽音楽部に入ればいい話じゃないか」


 和田は僕に強く、そう言い放つ。


「君のような人がいるから、低俗な音楽ばかりが注目されるんだ」


 今の一言に完全に切れた僕を、金本が止めに入る。


「まあまあ岩崎くん! バンドはできないけど、部室ではギターも弾けるから」


 金本が指を指すと、そこにはギターやアンプなどが置かれていた。


「とりあえず君がバンドをできるまで、同好会に入ったままが賢明だよ」


 金本が言うように、ここで同好会を辞めてしまったら今度こそ音楽ができる部活がなくなってしまう。


 部活に入ってバンドを組むことが目標であるため、僕は妥協するしかなかった。


「わかりましたよ.....しばらくは、この同好会でやっていきますよ」


 ため息をついた僕は椅子に座り込み、頭を机にゴツンとつけた。


「とっ、とりあえずはギターの練習するつもりでここに来るといいよ」


 岡山は申し訳なさそうな顔で僕にお茶を差し出してきた。


 しばらくして、また金本達はアニメを見たりゲームをしたりしている。


 ーーやることがない。


 僕は彼らから離れて、一人でギターを弾くことにした。適当にギターを弾いていると、金本たちが演奏した曲を思い出す。


「あの曲、かっこよかったなー」


 僕は記憶を頼りに、その曲のフレーズを弾いてみた。


「ピュアピュアLOVEだね、その曲」


 ギターの音を聴いた金本が、僕に近づいてきて話しかけてくる。


 ーーピュアピュアLOVE? そんな、ダサいタイトルなのか? この曲。


 ロックぽい感じの曲なのにタイトルがダサいと思ってしまった。


「その曲は、岩崎くんが来た時にみんなで弾いた曲だよ? ギターがかっこよくてね! 僕も、かなりお気に入りさ」


 金本が曲のギターの説明をしているのと、僕は勢いよく席を立つ。


「そうなんですよ金本先輩! あの曲って、ギターがかっこいいなと思ってたんです」


 僕が意気揚々(いきようよう)と自分の感じた曲の良さを話している。


 金本はキョトンとして黙っている。


 ーーあっ、やばい。つい夢中で話してしまった。


 我を忘れてしゃべってしまった僕は、恥ずかしくなった。すると、金本が僕の肩に手をポンと置いてくる。


「それなんだよ岩崎くん! その音楽を熱く語る! それこそ、僕らが伝えたいことなんだよ」


 金本は僕の肩をバシバシとたたいて満面の笑みを浮かべている。


「そうかそうか! 岩崎くんはこの曲が気にいったようなんだね」


 金本は自分のカバンから、なにやら大きな箱を取り出し僕に手渡す。


「曲が気に入ったなら、きっとこのゲームも好きになるよ」


 僕は金本から受け取った箱を見てみる。


 そこに書かれていた文字に僕は、顔が引きつった。


 ーー義妹(いもうと)と恋しようよ! お兄ちゃん。


「なんすか? これ」


 嫌な予感をしながらも、金本に尋ねる。


「ん?  なにって、ギャルゲーだよ?」


 その言葉に、僕はその場で固まってしまった。

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