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第十六話 「ライブDAライブ!」

 僕らのバンド練習は、今まで以上に練習量を増やしていた。貸しスタジオでの全体練習がメインとなっている。


 発端は金本の一言から始まった。


「ライブを……やる!」


 生徒会から追い返された後、金本はそう話した。


「おいおい、いきなりライブとか言われてもだな」


 荒木はどういうことなのかを、金本に尋ねる。


 文化祭でのライブは無理だと生徒会から言われているのに、なにを考えているのか。そう僕らは考えていた。


「学校でライブをやるためには、生徒会が認めざるおえない活動をしなくてはならない」


 金本は僕らを見ると、そう話始める。


「そこで僕は思いついたのだ! 学校が認めないなら、学校以外に認めてもらうと」


 金本の言葉を聞いた僕は、理解できずにいた。


「そっ、そもそも……誰に認めてもらえばいいんだ?」


 黙っていた僕らの代わりに、岡山が口を開く。


「まあ、これを見てくれ」


 金本はカバンからチラシを取り出すと、僕らに見せた。


 ーーショッピングモールイベント開催予定! バンド演奏者募集。


 チラシにはそう書かれていた。


「え? まさか、これに出るつもりなんですか?」


 もしやと思った僕は金本に尋ねると、彼はそうだとうなずいた。


「以前にバンドストーリーのギャルゲーをプレイしてね。それを、パクってみたんだ」


「主人公たちが商業施設の前で、いきなりライブをやって成功させたんだよ」


 ーーギャルゲーのシナリオを参考にするなよ!


 僕は心の中で、そう思ってしまった。


 しかし、ライブと聞いてしまうと、つい反応してしまう。バンドでライブをしたことがない僕にとっては、チャンスでもあった。


 金本は話を変えて、ギャルゲーについて語り始めている。


「ていうか、そのイベント開催っていつなんだよ」


 語っている金本に荒木はそう聞く。


「え、いつって? 二週間後」


 ーーえええ!


 僕らは口をそろえておどろいた。


「いやいや……さすがに二週間後は無理だろ、曲ですらまともに合わせてないんだぞ?」


 できるはずがないと主張すると、金本は机を強く叩いた。


「とにかくやるんだよ! 僕らの目的を忘れるな!」


 アニメやゲームの音楽をより大勢の人に知らしめる。


 まずはその第一歩だと、金本は言いたいのだろう。


「いきなりハードルが高すぎるだろう? アニメじゃあ、まずは学校でライブだろうに」


 頭をかきながら荒木はため息をついた。


「いや、案外いいアイデアだと思うな」


 和田が突然、そう話す。


「もしライブを成功させれば、周りに好印象だ」


「そこで文化祭でライブをやりたいと宣伝すれば、学校に問い合わせがくるはず」


 和田の言葉を聞いた金本は、パチンと指を鳴らした。


「それだよ、まさにその通り!」


 さすがだと言わんばかりに彼の肩をバンバン叩く。


 確かに和田の言う通り、ライブを成功させればうまく事が運ぶかもしれない。


「やりましょうよ! こんなチャンスはめったにない」


 僕の言葉を聞くと、仕方ないかと諦めて荒木は納得する。


「はあー、わかったよ! やればいいんだろう? でもやるなら、今以上に練習を重ねていかなきゃだね」


 荒木は楽譜を取り出すと、自分のパートを見ている。


「まあ、どうにかなりますよ! 頑張りましょう」


 僕が笑いながら言うと、全員が口をそろえて僕に向かって言う。


「おまえが、一番頑張らなきゃだろ!」


 こうしてイベント参加に向けて慌ただしく練習を開始した。


「開始したはずなのに、僕は進歩がない!」


 貸しスタジオで全員が練習していると、僕は叫んだ。


 ギターのコードは覚えた、曲に合わせて弾いても違和感がない。


 だが、いざ歌うとギターが弾けなくなる。


「いっ、岩崎君! リラックスだよリラックス」


 岡山は僕にフォローしてくれるが、和田は険しい顔をしている。


「やはり、無理じゃないか? ギターボーカルは」


 金本は和田からそう言われると、黙っている。


「確かに厳しいだろう、二つのパートをやるのは」


 荒木までもが同じようなことを言ってくる。


 黙っていた金本は口を開く。


「問題ない! 岩崎君は、やればできる子だ」


 目を輝かせて僕を見るが、正直に言うと自信はない。とりあえず、歌える部分を中心に練習をしてこの日は終えた。


 帰宅中に僕は、ため息をつく。


「はあ、今日も散々だったな」


 みんなと合わせて弾いてみたら、あそこまでひどいと思わなかった。

 世の中のボーカルとギターを、両方できる人はすごいなとおどろく。


 いろいろ考えてたら、一気に疲れが出てきた。


「ただいまー」


 自宅に入ると、リビングがなにやら騒がしい。


「おお、恭介! 帰ってきたか」


 父さんが僕に気がつくと、話しかけてくる


 どうやらみんなは、テレビを見ながら談笑していたらしい。


「なんのテレビを見てるの?」


 席に座ってそう聞くと、若葉が答える。


「音楽番組だよ、みんなでさっき演奏したアーティストの話をしてたんだ」


 テレビを見ると、そこにはいろいろなアーティストが曲を披露していた。


 ーーまた、くだらないアーティストの番組かよ。


 僕は興味なさそうに、テーブルに出された夕飯を食べる。


「どうしたの? なんか、疲れているみたいだけど」


 最近は僕を避けていた若葉が急に心配したように話しかけてきた。


「え? ああ、部活が忙しくてさ」


 僕はまた、ため息をつきながらそう言う。


「なになに! なにかやるの?」


 いつもと違って険しい顔で僕を見ている。


 ーーこいつ、なんでこんなに食いつくんだ?


 そう思いながら、僕は今日のことを適当に話すことにした。


「部活で急にライブをやることになってさ」


 僕はカバンから、金本にもらったチラシを取り出す。


 チラッと若葉の顔を見ると、なぜかホッとしたような表情に変わっていた。


「ほら、このイベントに出るんだよ」


 僕はチラシを若葉に渡した。


「……え?」


 若葉はチラシを見るとおどろいている。


「え?」


 若葉の一言に、僕もつられてそう聞き返してしまった。


「このイベント、私も出るんだけど……」


 言葉を聞いた僕はまた一言。


「……え?」


 それしか言葉が出てこなかった。

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