第十五話 「お願いフレンズ!おらの頼みを聞いてくれ」
昼休みに僕は、ひなたを探しに廊下を歩いていた。
「あいつはどこへ行ったんだ?」
学校を出たとは考えにくいが、校内のどこかにいるはず。
いそうな場所を探しても、見つけることができない。
「あのやろう……忍者かよ」
そろそろ諦めようと思っていると、保健室の前で大声が聞こえる。
「先生ー! わたし、どうしたらいいんですかー」
聞き覚えのある声が室内から聞こえてくると、そっとのぞきこむ。保健室の先生に泣きながら相談する、ひなたの姿があった。
「おい! こら、なに授業をサボって保健室にいやがるんだ!」
勢いよく扉を開けて、中にいるひなたに話しかける。
突然の声にビックリしたのか、僕を見るなり目を丸くしていた。
「がっ、がんちゃん! なんでここにいるってわかったの?」
ーーあれだけでかい声で、しゃべってたら普通にわかるだろ。
僕はひなたを連れて、保健室を出ようとした。
「なにするのよー! 離しなさいよ」
暴れるひなたは、抵抗をしている。
「話があるんだよ! とりあえず、保健室から出ろ」
廊下に出るとそのまま、ひなたを連れていく。しばらく廊下を歩いていると、僕に話しかけてくる。
「……バカにしてたでしょう?」
そう話す姿に僕は答えた。
「へ? 別にいいんじゃないか? 悪いことじゃないだろうが」
僕の言葉を聞くと、目を見開いて驚いた顔をしている。
「けど、ギャルゲーなんだよ? 女の子がそういうのって変じゃない?」
ーーアホか、こいつは。
僕はため息をつきながら、そう思った。
「変ではないよ、曲だっていい曲じゃないか。だから、聴いてたんだろ?」
そう聞くと、ひなたは小さくうなずいた。
「僕だって、家ではギャルゲーをやってるぞ? 妹系の」
金本から借りたことは黙っておいて、僕は恥ずかしげもなく話す。
「え……がんちゃんもやってるの?」
意外だと思ったのか、ひなたは驚く顔をしている。
「そんなことはどうでもいいけど、おまえ……僕が聴いてた曲って詳しいか?」
もしかしてと思った僕は、ひなたにそう尋ねた。
仮にそうならば、僕の助けになるかもしれない。
「詳しいもなにも、曲なら歌詞カードを見ないで歌えるくらいだよ?」
ーーこいつ、天才かよ。
僕はそう思うと、ひなたに向かって手を合わせる。
「頼む! 僕に、歌を教えてくれ」
拝みながら頭を下げてそうお願いすると、ひなたは理由を尋ねた。
僕が事の経緯を説明すると、なにか考え込んでいる。
「がんちゃんのバンドが、あの曲を歌うのかー」
歌うのは難しいと言われているような気がするが、今はそれどころではない。
「先輩からは楽しく歌えばいいって言われたけど、できればうまく歌いたいんだよ」
ギターは下手でもなんとかなるけど、ボーカルとなればそうはいかない。
楽しさを第一に考えてはいるが、どうしてもボーカルはきちんと歌っておきたい。
そう思いながらひなたに話すと、彼女は答える。
「いいよ、私でよければ」
その言葉を聞くと、あまりのうれしさに飛び上がった。
「ただし! 条件があるわ」
廊下で踊り狂っている僕は、ピタッと止まる。
「は? 条件って……なんだよ」
ひなたは僕に、三つの条件を出してきた。
条件その一。ギャルゲーをプレイしていることは絶対に誰にも言わない。
条件その二。歌の練習の時は絶対に逆らわない。
条件その三。新作のギャルゲーをプレゼントすること。
「意味がわからない、特に条件その三が……」
放課後になって文句を言いながら、同好会の部室へ向かう。
「そもそも、あいつって歌がうまいのか?」
ーー大事なことを聞き忘れた僕は、不安でしかない。
部室へ着くと、めずらしく誰もいない。
「あれ? 今日って、部活動がない日だったっけ?」
いつもなら金本たちが先に来ているはずなのだが、僕が一番だ。
クラスの集まりかと思った僕は、一人でギターを取り出す。
「来るまで、ギターでも練習していようかな」
曲のギターも覚えなければならず、楽譜を見ながら弾く。
相変わらず、下手くそなギターを鳴らしていると扉が開く音がする。
「あのムカつく生徒会長め! 一体、なに様のつもりだ!」
イライラしている金本がそう言いながら部室へ入ってくる。
「まあ落ち着けよ、あまり怒るな」
荒木たちは金本を落ち着かせながら席へと座った。
「なにかあったんですか? めずらしく遅いので心配しましたよ」
すると金本は飲み物を飲み終わると、なにがあったか説明する。
「今年の文化祭の出し物で同好会で、ライブ演奏したいと申請したんだ」
「けど、あの生徒会長はなんて言ってと思う?」
すると金本は、生徒会長のまねをして話す。
「君たちの申請は却下だ、すでに軽音学部が同じ内容で申請してきている」
やたら引くく、太い声を出しながら、金本は話すを続ける。
「過去の出し物や、岩崎君の件を考えると同好会でのライブは認められない」
文化祭まではまだ先の話ではあるが、早い時期に各部活動は生徒会に申請しておくのだろう。
あの生徒会長が僕らの申請を通すとは考えられない。金本の話を聞くとそう思った。
「最後に嫌味っぽく、君たちはパソコンで感想文でも書いていたほうがいいよだって」
「あのファッキン野郎め! ふざけやがって」
思い出して頭にきたのか、金本はそう吐き捨てた。
「けど文化祭はまだ先ですし、今はバンド練習を頑張りましょうよ」
とりあえずバンドを優先したほうがいいと思った僕はそう話す。
金本は突然立ち上がると、全員に向かって叫ぶ。
「こうなったら、意地でも文化祭でライブをしてやる! 生徒会がなんだっていうんだ!」
情熱は感じるが、あの生徒会では校内でライブは難しいだろう。誰もがそう思っていると、金本はある提案をする。
それを聞いた僕らは、驚くと同時にいいアイデアだと思うのだった。




