表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/173

第十話 「ドキドキ楽器店!ワクワク貸しスタジオさん」

「うーむ、発想はいいと思うよ? けどさ……うまくいくのかな」


 曲を聴いた金本たちは、悩みながら声にする。僕が選んだ楽曲は、弦楽器が入っていない電子音楽のジャンルだ。


 荒木や岡山と似たジャンルだが、演奏のやり方が違う。曲をそのままコピーをして演奏するのとは、ちょっと違っている。


 僕が考えていたのは、曲調をロックバンドみたいな感じにする形だ。


「それは原曲ブレイカーだね」


 和田はわかったような顔で一言、そう話す。


「いやいや……原曲を壊したらイメージが崩れちゃうだろ?」


 曲を知る荒木は、それはないといった感じで反論する


「けっ、けど……そこまで難しい曲じゃないから大丈夫かも」


 岡山は曲のドラムを聴くと、足でリズムを刻んでいた。


「まあこの曲だけでなくて、みなさんが選んだ曲もやりましょうよ」


 荒木たちの曲もかっこいいし、演奏してみたいと思った僕はそう提案する。


「では、それでいきましょうか!」


 話の途中で金本は、立ち上がって帰り支度を始める。


「善は急げだな! これから、楽器屋へ行こう」


 突然の言葉におどろいた僕は、なにをするのかを尋ねた。


「楽器屋に行って……なにをするんですか?」


「え? 練習だよ、決まってるじゃないか」


 金本に言われるがまま、僕らは楽器屋へ向かった。到着して店を眺めると、なぜか僕は緊張していた。


「岩崎くん、なにオドオドしてるの? 入るよ」


 和田は僕に声をかけて、店へと入っていく。一人残された僕は、後を追うようにお店へ入った。


 ーー楽器屋って、一度も来たことないんだよな。


 僕は慣れない空間に戸惑いながら店内に入ると、たくさんの楽器が並んでいる。


「いらっしゃいませー」


 店のカウンターから、店員さんのかけ声が聞こえる。金本は店員さんに話しかけていた。


「すみません、貸しスタジオを使いたいんですけど」


 店員はパソコンで確認しながら、金本と話しをしているようだった。


「時間がかかりそうだし、店内でも見て回ってきなよ」


 金本が待っている僕らにそう話す。


 僕は言われた通り、ギターコーナーを見ることにした。


「うわー、すごいな! たくさんのギターがあるよ」


 エレキギターが壁にたくさん飾ってあるのを見た僕は興奮が止まらない。

 店内にあるギターを全部、弾いてみたいとも思うくらいだ。


「やっぱり、ストラトキャスタータイプのギターが一番だな」


 和田がそう言いながら、ギターを眺めている。


「そう思うだろ? 美しいくびれのついたボディ! シングルピックアップから鳴る、 枯れた音が絶妙でね!」


 いきなり話しかけられた僕は、ただうなずく。


 ーーよくわからないけど、ギターが好きなのかな?


 それからも和田は話を止めることなく、しゃべっている。


 目線を店内に向けると岡山はドラムのスティック売り場に、荒木はベースを試奏していた。


「普段は、アニメやゲームしか興味がないと思ってたのに意外だ」


 部活の時と違う光景に、おどろいていると金本が僕らを呼んだ。


「おーい。スタジオの空きがあるから利用できるって」


 受付カウンターに戻ると、店員さんから、説明を受ける。


「とりあえず……二時間はご利用できますが、室内での飲食は禁止になっています」


 利用上の注意など、説明を受けた僕らは部屋まで案内してもらった。


「貸しスタジオを使うってことは、さっそく練習ですか?」


 僕が聞くと、金本はギターを持ちながらうなずく。


「とりあえず、全員で音合わせをしてみようじゃないか!」


 スタジオに入ってすぐに金本は、ギターをセッティングする。ギターアンプの電源を入れ、音を確かめているように弾きだした。


 ーーギュイィィン!


 アンプからは、爆音でひずませた音が鳴り響く。


「相変わらずうまいな……」


 金本の弾く音を聴いた僕は、改めてそのうまさにおどろく。


 全員が準備を終わらせると、岡山はなにをするのかを金本に尋ねる。


「おっ……音合わせって、具体的になにすればいいんだ?」


 なんの指示もなく、僕らはとまどっている。


「うーむ、じゃあ岩崎くん! 君が、適当に弾いてくれないか?」


 しばらく沈黙が続いた後、金本は僕にそう話しかけてくる。


 ーーいきなり弾けと言われても。


 僕はなにを弾いていいかわからず、金本に尋ねる。


「え? 急に言われても、できないですよ! なにをすればいいんですか」


 僕があたふたしていると、ドラムの音が鳴る。


 ーードンッ! ドンッ。


「こっ……こんなので始めればいいだろ?」


 ゆったりとしたドラムの音を聴いた金本は、なにかをひらめいく。


「じゃあ、これとこれ。このコードを、繰り返して弾いてみて」


 ーージャンジャカ! ジャンジャン。


 言われたギターコードを弾くと、ドラムに合わせて弾くように指示される。


 ーードラムの音を聴いて、弾けばいいのか。


 ドラムのリズムに合わせ、僕は弾き直す。


「よしよし、じゃあ荒木はベースを頼んだよ」


「……はいよ」


 荒木は僕のギターの音を聴くと、ベースを弾き始めた。


 三つの音がうまく重なり、バンドの演奏みたいになっていく。


「いいじゃない! そのままずっと、ループしててね」


 演奏を聴いていた金本は、和田に合図を送る。


「和田! 邪魔にならないように、いい感じでギターを足してくれ」


 和田はタイミングよく、途中からギターを弾き始めた。


「では、そろそろ僕も参加しよう」


 ボリュームを上げ、金本はメロディーをギターで弾き始める。すると、全員が演奏が一つの曲になっていた。


 ーーあれ? なんか、このメロディーに聴き覚えがあるような?


 金本の弾くメロディーを聴いた僕は、ある曲を思い出した。


「あの、これってまさか」


 恐る恐る聞くと、金本は答える。


「わかっちゃった? そう、金太郎の歌だよ」


 ロックな演奏をしているはずが、まさかの金太郎に僕はおどろいた。


「和田、ギターソロだ! バッチリ決めてくれ」


 そう叫んだ金本は、ギターソロを和田に弾かせる。


 ーーギュワワーン!


 ギターソロが鳴ると、それはもう別の曲に変わっていた。


 和田がギターソロを終えると、金本はうっとりしながらつぶやく。


「これぞまさに……KINTAROCK!」


 演奏が終わり、静かになった室内で、僕は金本たちを見ていた。


「すごい……即興で弾いたのに、こんなにかっこよくできるのか」


 この人たちとバンドを組めたことに間違いはなかった。


 僕はあらためて、金本たちのテクニックにそう確信を持ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ