予報師 VS 暗殺者
テンは袖からナイフを滑らせ手に持ち、手足に巻かれたロープを切ってくれた、そして無言で買い物袋を押し付けて小声で喋る。
「ちょっちヤバいね、ディオは先に帰ってて戸締まりは確り合い言葉を知らない人は無視だよ、いいね」
「そ、そんなにヤバいのか?」
テンにしては余りにも固い表情だ、少しどんよりした雲のせいで月の光がテンの姿を隠した。
「4日たって戻らなかったら狩崎って家を訪ねるんだよ、行っけ!」
「くっ!帰ってこいよ!」
フラディオの姿が見えなくなった瞬間に肩に痛みが走る、数秒動くのが遅れていたら左腕は無くなっているだろう。
とっさに傘を持ち開く、甲高い金属音の後横腹に蹴りを入れられた。
「げふぅ……くそ!」
「……脆い」
「左前方から突き、続いて回し蹴りのフェイクに混じり回転切り払いの確率80%」
予報通りの動きはするが……早い、無駄が無さすぎる。
「うぐっ……雨!」
「……タイプ・ブルー」
「くらえ10トン分の水圧だ!ついでだ!氷柱!」
傘を媒介に豪雨は鉄砲水になりキングストンに命中する、確実に仕留める為に一瞬にして氷結し叩き割った。
「……そんな……冗談じゃない」
「もう終わりですか?対したことはないですね」
キングストンはずぶ濡れになりながらもダメージはない、それどころか此方にダメージまで与えている。
「うっ!投擲ナイフしまった左脚に」
「止めです、退屈すぎますよ……」
「マズイ!防御を!」
「!」
傘を持つ手に投擲ナイフが刺さる、キングストンが着ていたコートがゆっくりと舞う何かの炸裂音、大量に降るナイフの豪雨。
「氷結!」
寸前の所でナイフの豪雨を止める厚い氷のドームはキングストンには撃ち破れにいだろう。
いくら強くても所詮は……。
「タイプ・ブルー」
「とっ!」
淡い光と共に氷が消失する、鋭い突きと今度は赤い光にナイフが包まれる。
「タイプ・レッド」
「間に合え!」
振り下ろされるナイフを傘で弾くナイフはキングストンの手を離れ廃ビルの壁に突き刺さるとパズルのピースのように壁がバラバラになった。
「……なんて奴だよ……雷!」
「タイプ・ブルー」
「また……不味いな何かの手は」
キングストンに自分の攻撃、能力、体術が通用しない唯一の救いは肉体に能力の影響を受けず純粋な自身の戦闘力だけで向かって来ていることだ。
「っ!」
不味いぞ、じり貧は勘弁だそれに使いたくないしな……さぁ、どーするテン。
「伏せろ!」
「あれは!対MG用ロケット・バズーカ?!」
突然の声に驚き、黒光りする物体から弾丸が発車するそれを確認すると同時に柱の壁に頭を守るように隠れた。
爆風が廃ビルを焦がし、辺りが火の海になる。
「早く乗れ!」
「お前は?」
「いいから早く!リーファに見つかる前に!」
手を引かれバイクの後部に乗せられる。
「掴まってろ!飛ばすから!」
「うぐぅ……なんて日だ」
昼のように明るかった廃ビルを抜け出し、すっかり暗くなった夜道を走るバイクは給油の為に一旦止まった。
「おぇ……助けてくれて良かったよ」
「バァーロー、逃げるが勝ちって言葉を知らんのか!」
ヘルメットを外し、汗を拭う僕の為に全力疾走し助けに来てくれたのだろう。
「はぁ〜あのバズーカ代で赤字だよ」
「いいよ別に、それより言い付けは守るべきだよ……まぁいいや、でも人間相手にアレは」
「テンパってたんだから、しょうがねえだろ」
丁度いっぱいになったバイクを転がし支払いを済ませる。
すぐに事務所に戻り、一休みしたいのだ。