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後輩に告白された。男子校だよ?

久々の短期連載。




「ずっと前から好きでした。付き合ってください!」




秋空の夕暮れ時。人通りの少ない校舎裏。

ロマン溢れるのその場所で、俺は告白をされていた。


朝から下駄箱に入っていたのは今時珍しくて古風なラブレター。可愛らしい便箋には微笑ましい丸っこい文字。封筒からはほんのりと甘い香りもしてきて、不快感は無かった。


元々、ルックスも性格も悪くない方だと自分でも思っていたので、何のためらいもなく指定された時間にこの場所にやって来た。



「あの……ご迷惑だったでしょうか?」



こちらの機嫌を伺う上目遣いの瞳と視線が合う。モジモジとした様子は可愛いとしか言いようがない。上気した頬からかすかな色香を感じる。


恋人いない歴=年齢。返事ひとつで自分の人生のステータスに飛躍的な発展が見られるというのに俺は躊躇していた。



「えっと、どうして俺のことが好きになったの?」


「それは、先輩が体育祭で応援団長として汗を流す姿や文化祭で一生懸命ダンスをされた時の姿を見て……あっ、でもでも、普段の先輩もカッコいいですよ。ついつい困っている人を見つけたら手伝ったり、進んで掃除当番を引き受けて廊下をピカピカにするまで意地を張ってるところなんかが面白くて」


「おっ、おう」


全面的に好意をぶつけられて悪い気はしない。嬉しい。ちょっと恥ずかしい。



ただ、



ここが男子校で、後輩が学ラン着ている事実がなければもっと嬉しいのにな。



男である。


まごう事なき男である。


ちょっと体の線が細くて華奢な感じだが、男である。


ハスキーボイスな男である。


学ランにズボンである。



「お前の気持ちはわかった。十二分にわかった」


「じゃあ……」


「だが、俺は混乱している。突然の告白で頭が真っ白になっている」


「えっと……それは……」



目の前の後輩の目からハイライトが、光が消えていく。捨てらた子猫みたいになる。

えぇい。何で目をしやがる。



「そこでだ。時間をくれ。心の整理をする時間を設けよう。突然のことで俺はパニックになっている。これじゃあ冷静な判断も出来ないからな」


「……そうですよね。すいません……いきなりで。自分のことでいっぱいいっぱいで先輩の心構えへの配慮が足りませんでした」


「分かってくれればいいんだ。そうだな。とりあえず二日ほど時間をくれ。それくらいあれば……うん。きっとお前に納得のいく返事が出せる」


「わ、わかりました。じゃあ、二日後の夕方……今日と同じ時間にこの場所で。それでいいですか先輩?」


「おう。じゃあそれで」


「そ、それじゃあ。し、失礼しました!」



二日間という時限爆弾を設置し、後輩は脱兎の如く走り去っていった。




さて、これからどうしよう。


















「………ということがあったんだ」


「何の冗談だ。貴様のそういうつまらんジョークは面白くないぞ」


「冗談でもジョークでもない実話だから困ってんだよ。こういう話は女性からモテモテの大手財閥の御曹司に聞くのが手っ取り早いと思ったんだよ」


「なら、こう言わせてもらおう。自分のケツは自分で拭け。とな」



学校からほどよく離れた喫茶店。普通の男子高校生二人がいれば店のモダンな雰囲気から浮いてしまうが、目の前のこの男と一緒なら不思議と溶け込める。

否。誰にもツッコむことをさせないオーラがこいつにはある。



「そこをどうにか頼むよ。我が親友、鳳凰院(ほうほういん) 清麿(きよまろ)さまよ」


「随分と都合がいい親友だな。高嶺(たかみね) (かおる)



鉄仮面な親友の目が笑ってないから困る。

親同士の交流があったのがきっかけで仲良くなった……腐れ縁の清麿。

仲がいい友達なら何人もいるが、厄介事を相談・解決してくれそうなのはこいつしかいない。


クールな見た目と冷たい態度から罵られたいという女は数知れず。他校から清麿目当てで女子が近づいてくるのは日常茶飯事。呆気なくフってもフられた女は満足そうに鼻血出して倒れる域まで達している。


歩く女性ホイホイとはこいつのことを指し示す。



「大体、貴様も告白されたのが初めてじゃないだろう」


「いつの話だよそれ。幼稚園時代の告白なんてカウントの範囲外だよ。あの子は引っ越したし。小学校の時に告白してきたミッちゃんは翌日には清麿にアタックしてたし」


「中学の時はどうだった。確か、三年の夏に……」


「あん時は二股かけられてたんだよ。いや、後から聞いた話だと三股だったか?」



自分で言ってて悲しくなるくらい女運がないな俺。



「マスター。哀れなこの男にホットコーヒーのお代わりを」


「誰が哀れだこのヤロー! 店長、いつも通りミルクと砂糖増し増しで」



慣れたオーダーをして、改めて告白してきた後輩のことを考える。



「俺、あの子のことよく知らないんだけど。清麿は何か知ってるか?」


「薫の言った特徴と後輩というワードから全校生徒を調べてみると……こいつだな」



清麿のスマホに入っている情報データベースには世間一般にはお見せできないような個人情報が当たり前のように保存されている。命令一つで鳳凰院財閥の諜報部隊が行動するから恐ろしい。


その人物の履歴やSNSのアカウントまで拾ってくるんだぜ? ちなみに、本名じゃないハンドルネーム使っても本人特定する精度でだ。

警察に通報してもいいレベルだが、それはしない。

だって、何かと便利で俺も利用させて貰う訳だし、共犯だよ。



「どれどれ」



清麿に差し出されたスマホの画面を見る。




早乙女(さおとめ) 瑞希(みずき)

学年は一年。

親の仕事の都合で海外にいたが、高校に進学すると共に帰国。

現在は市内のアパートに居住。

部活動は美術部。

趣味は絵描き。

得意科目は英語。

苦手科目は体育。


過去に両親の離婚暦があるため、情報の収集が困難。詳細は捜査中。




「相変わらずスゲー情報量。得意科目とか別に聞いてないんだけど」


「これくらい我が鳳凰院財閥なら当たり前だ。ただ、離婚関係で戸籍等に変更があるせいで他の奴よりは情報が少ないがな。薫の情報なら好物から卑猥な本名の隠し場所。ホクロの位置まで詳細に……」


「プライバシー! ってか、その情報を更新してるのは清麿自身だろ‼︎」


「そうだが。なにか?」



悪びれる気もないよこの男。

それにしても早乙女 瑞希ね。全く聞き覚えがないな。校内でも見かけたことは何回かあるけど、ろくに話したこともないしな。


どうしてそんな男子に好かれて告白までされるかな俺?



「あ〜〜〜。どうすればいいんだよ俺」


「どうもなにも告白されたならフってしまえばいい。貴様がホモ……男性に魅力を感じるのであれば付き合うといい」


「いやいや。流石に俺にもそっちの気はないよ。好きなのは女の子。それもナイスバディのバインバインな管理人のお姉さん的な人な」


「そうか。それなら安心だ。俺も自身の貞操の心配をしなくていいな」


「殴り合いをご所望かな? 上等だ表に出ろや‼︎」


「却下だ。俺は寛大だから弱い者イジメはしたくない。………話を戻すが、貴様はどうせ男から告白されて気持ち悪いがもしストーカー的に迫られたらどうしようとか考えているのだろ?」


「うっ。その通りです」



確信を突かれて俺は肩を落とす。

敬意を持って貰えるのは人として誇らしいことだ。

だけど、好意ってなると……LIKEはいいけどLOVEは無理だ。


断じて俺はホモではない。ノーマルだ。健全な男子高校生だ。


例え相手が美少年でも腐女子の方々が喜ぶようなBL展開には絶対にならないし、やらない。


俺が悩む一方で、グイっと残りのコーヒーを飲み干して清麿は立ち上がる。



「なら、あとは貴様が納得のいくまで考え抜くことだな。親友のよしみだ。早乙女 瑞希がフられた後に問題を起こせば対処してやる」


「おぉ、清麿……流石、我が友」


「助言だが、気になるのであれば自分からコンタクトを取りに行って話をしろ。猶予は二日あるのだからな」



それだけ言い残して、清麿はさっさと店を出て行った。

元々用事があったらしいが、時間を作ってくれんだよな。頼れるのは親友ってな。


で、肝心なことは解決してないが、方針は決まったな。明日、会いに行こう。

あの後輩がどんな人物なのか。それを理解したうえで、返事をするんだ。

俺が感じたありのままの気持ちを。


流石に本人に直接聞くようなことはできないから同級生とかに聞こう。



「よし、そうと決まればさっさと家に帰るか」



ちなみに、会計をしたら二千円近く払わされた。

清麿のやつ、自分の分の金を置いていかなったな‼︎





あと二話ほど投稿予定。感想・評価をお待ちしてます。

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