6.劇的ビフォーアフター
次の日は始業式であった。長い校長の話もこれから3年間続くのかと思うと気持ちが重いが、朝礼は月に1回だからまだなんとかなるだろう。
担任発表が行われ、俺のクラスの担任は今年から常勤になった三浦という男の先生だった。体育会系かと思ったが、担当教科は数学らしい。世の中人を雰囲気で判断してはいけないようだ。
入学してしばらく経ったクラスの雰囲気は、良くも悪くも賑やかだった。けれどもどこかうっすらと教室内階級が見えた気がした。
まあこの学校の良いところに「いじめ行為は問答無用で退学処分」とあるので馬鹿な行動を起こす輩はまずいないだろう。
しかし、中学のときあれほど高いテンションを誇っていた赤川は一言も話さず、ずっとスマホをいじっている。こういう時に場を盛り上げるのは赤川の仕事と言ってもおかしくはなかったのに。
外見の変化といい、テンションの下がりようといい、春休みの間に何が彼女を変えてしまったのか。ここまでだんまりを決め込まれてしまうと話しかけづらいものがある。正直言うと、このクラスに友達がいるようにも思えない。が、俺は俺でようやっと友達が2、3人できたところなので、どっちもどっちというところだろう。
帰りのホームルームが終わり、スタスタと帰ろうとする赤川に今日こそはと話しかける。
「あの、赤川さん!」
「?」
振り向く赤川のセミロングの髪が揺れ、シャンプーの香りが漂う。メガネはないものの、間近で見るとやっぱり赤川本人である。
俺は少しでも長く話せるような話題を振った。
「あのさ、合唱部とかって、入らない?」
「うーん、もうガーデニング部入ってるかな」
…普通に失敗だった。
「あ、そうなんだ」
「楽しいよ!逆に入る?あ、でも合唱部あったよね」
逆に勧誘されてしまった。
「ああ、いや、まあ」
「でも誘ってくれてありがとう!じゃあ、また明日!」
「おーう」
会話の内容はどうあれ、俺が心配していたよりかは赤川のテンションはそこまで下がってないようだ。それより、俺の会話におけるコミュ障っぷりをなんとかしないといけない気がしてきた。コミュ障レベルの高さがもし友人の多さに反比例するならば、これは深刻な事態だ。一刻も早くコミュ障レベルを下げなければ。