5.眠り姫はたとえ入学式でも眠る
長い。
長いったら長い。
中学校の時もそうだが、どうして校長の話というものはこうも長いのか。お祝いの言葉もそこそこに、学校の歴史と創始者、そして長々と続くさりげない自慢話。時計に目をやるとざっと20分は話しているだろう。
ふと赤川の方を見たが、予想通り眠っていた。赤川ほどどこでも眠れる奴はいない。彼女はホームルームだろうが授業中だろうが学年集会だろうが関係なく眠る。なくせに頭は良いのでちょっと羨ましかったりする。
しかし、そんな彼女がなぜこんな頭の悪い高校にいるのか、彼女ならもっと頭の良い高校に行けると思ったが、それを聞くのはかなり失礼にあたるので、止めておこう。
25分ほどで校長の話が終わり、ぐっすり眠っていた赤川も「え、終わったの?」とばかりに起き出した。その後はかなりスムーズ、というよりは急ぎ足で入学式を進めていった。
式も終わり、事務連絡と配布物を貰い、挨拶をして教室を出る。俺は真っ先に赤川を追いかけた。が、いかんせん向こうは親と話しているのでなんとも話しかけづらい。ここは話が終わるまで待つかと思い、廊下の壁に寄りかかった。
しかし、いざ話しかけるとしても、一体何を話せば良いのだろうか。よく考えてみなくとも、告白してフラれた相手なのだ。フリ方がどんな形であれ、向こうもこっちもかなり気まずい。けれども同じクラスなのに話しかけないというのもどうだろうか。
すっかり考えることに没頭していた俺は、赤川がとっくに親と帰っていることに気付かなかった。
「まあ、また明日があるか。」
と呟きながら2度目の悲しい帰路に着くのだった。