3.衝撃のさよならを
一瞬の静寂ののちに、赤川は口を開いた。
「そうなんですか!あ、私、急ぐので!」
と言い残し、スタスタと帰って行った。
おいおい。
おいおいおいおい!?
今ので終わってしまったのか…!?
あまりのあっけなさに思わず俺は膝を着いてしまった。というより、着かずにはいられなかった。とりあえずこれは、フラれた、ということでいいのだろうか。赤川とはもうかなりの距離が開いていて、追いかけることは万年インドアの俺に体力的な問題で無理だった。
そうなんですか、という言葉が頭の中をぐるぐると巡る。
「どういう状況だよ…」
思わず声に出てしまったが、周りを見渡しても誰もいないこの状況では、誰かに聞かれるなんてことはなかった。
しかし、いつまでも地面に膝を着いている場合ではない。俺は服についた砂を払うと、赤川と同じように一人とぼとぼ帰路についた。
家に着く頃には、フラれたショックというものは大体癒えていた。卒業祝いに学校から貰ったお菓子を食べながら、昼のワイドショーを観るほどに。
「まあ、高校で頑張るか」と呟いてみたものの、どう考えても学生の本分は勉強であって、決して彼女をつくるものではない気がするが、まあ、いいだろう。
この春から通うことになる壱岐坂高校は、通学に1時間かかるわ偏差値はそこまで良くないわ、おまけに併願受験なので半分不本意での入学だわと、俺的にあまり好きじゃない所だった。しかし、女子の制服は人気があるらしく、ここの中学校からも何人か来るらしい、と聞いた。
赤川はきっと俺なんかよりもっと頭の良い高校に行ってんだろうな、と心の中で呟いた。いや、過ぎ去ったことを悔やんでも始まらないと思い、食べかけのせんべいを口の中に押し込んだ。