16.先輩に相談だ
放課後。俺はこれ以上ないレベルの早さで掃除を終わらせ、合唱部の活動場所である音楽室へ急いで向かった。
もちろん、残りの【七つもない不思議】について聞くためだ。しかし部活が始まると(まあ当たり前だが)皆それまでの熱気はどこへやら、一転マジメモードに入ってしまうので、その前までに聞かねばならない。
それにしても、なぜ音楽室というものは学校の最上階の一番端にあるんだ。インドアな俺への嫌がらせなのかこれは。そんな不満を心の中で呟きながら音楽室のドアを開けた。
部活はまだ始まっていないらしく、カーペットの敷いてある床に座っておしゃべりをしていた。
俺は真っ先にこの部活1番の情報網を誇る東野風雅こと、風雅先輩に話しかけることにした。
風雅先輩は3年生の先輩で、結構フレンドリーに話しかけてくれる心優しい先輩だ。ちなみにパートはテノールである。
「風雅先輩!」
俺の呼びかけにスマホをいじっていた手を止め、顔を上げた。
「どしたのー?」
「先輩のたぐいまれなるその情報網を頼りに聞きたいことがあるんです!」
と言うと先輩は、なんだなんだそんなにこの俺が必要なのか、とどこか誇らしげに笑ってみせた。
「で、この東野くんを使って何を知ろうというんだい?」
「あの、【七つもない不思議】って奴について教えてほしいんです!」
その言葉を口にすると先輩はハテ、と首をかしげた後、まるで頭上に豆電球が点灯したかのようなリアクションと若干高潮気味のテンションで語り出した。
「ああ!【壱岐坂七不思議】のことか!」
何ですかそのちょっとかっこいい言葉は。