14.その4 伝説の生徒会長
俺がそう言うと、赤川は少し驚いた顔をして、
「別にいいけど…。でも地下3階からは行けないよ?鍵、ないし。」
「いや、ちょっと見るだけ。」
まあ、実のところただ赤川と長くいて、長く話したいだけなのだが。
「わかった!じゃあ放課後ね!」
「おうよ」
よし、と俺は心の中でガッツポーズをした。吊り橋効果だかプラセボ効果だかなんだか知らないが、ちょっとはこう、好意をもって欲しいのだ。
お化け屋敷に誘う感覚で誘ってしまったが、呪われたりしないだろうか、と思い受験時に買ったお守り(ただし学業祈願)を持って行くことにした。
放課後になり、俺と赤川は別館に向かった。別館は特進コースの人しか使わないが、バレなければ分からないだろう。
人目を見計らい、俺たちは立ち入り禁止の看板を横目に階段を勢いよく下りた。
地下1階はうす暗い、というより普通に暗かった。非常灯と窓からの光しか光源がない中、いつの間にか俺が先頭になる形で歩いていた。
教室はあるにはあるのだが、全てに鍵がかかっている上、どういうわけか部屋の中が見えなくなっている。若干の不気味さを覚えつつ足を進めた。
「なんか、真っ暗だね」
口を開いたのは赤川だった。そうだな、と反応し、廊下の突き当たりまで来た。
おそるおそる振り返っても何もないので安心しながらさっき下りてきた階段まで向かった。
「次、2階行ってみようか。」
「うん」
階段を下りると地下1階よりさらに暗く、ただぼやっと階段の段が見えるだけだった。
そして、鍵がないと入れないという、地下2階最深部まで辿りついた。
「そういえば聞いた話だと、ここの鍵を持ってるのは、七つもない不思議その4【伝説の生徒会長】ただ一人なんだって!」
なんだその中二心くすぐるネーミングセンスは。
「なんでも学校中の先生に好かれてた上に理事長と仲もよく、その時に鍵をもらったって聞いたよ」
「じゃあそいつに頼めばいいんじゃないの?」
すると赤川は首を振り、
「もう2年前に卒業しちゃった」
「…なんか残念だな」
立ち入り禁止エリアを出て赤川と別れた後、俺はふと思うことがあった。
その2の【謎の空洞】は「地下2階」にある。
そしてその3【防空壕】も「地下2階」だ。
俺の仮説が合っているなら、きっとこのふたつは繋がっているのではないのか。まあそれはそうだろう。防空壕だし、たくさんの入り口がないと色々とまずいのではないのか。
それにしても、この【七つもない不思議】はいくつあるのだろうか。明日も赤川に聞いてみるか、と俺は久しぶりにうきうきした気持ちになったのだった。