12.その1 壁階段
七不思議とか少しやってみたかったのです
ということもあり、俺が書記になってからはや1ヶ月が経った。
とりあえずクラス全員は覚えたが、誰かが教室に入ったら出席簿に印をつけるこの単純な作業は正直いってめんどくさい。しかし自分から立候補した手前やめることは出来ないので1年間頑張るしかない。
退屈だった日常、というとかっこつけているみたいだが、まあそんな毎日をある日ちょっとだけ変えてくれたのは赤川の一言だった。
「ねえ、辻村くん知ってる?」
「何を?」
投げかけられた質問に反応すると赤川はふふーんと笑い、自信満々に答えた。
「この学校の七つも無い不思議」
「無いのかよ」
半ば呆れながら答えると、いやいやこれが不思議なんだよお兄さん、と話を続けた。俺はお前の兄ではないのだが。
「まずその1、【壁階段】」
「ああ、この階の一番端のやつか」
この階―3階は階段が3つある。
1つは俺のいるB組の横にある階段。ここから講堂に行くことができる。
2つ目は廊下の途中にある階段。そこから音楽室に通じている。
その問題の階段は1つ目の階段から2つ目の階段を横切るように真っすぐ廊下を歩いた突き当たりにある。
それは階段こそあるにはあるが、せいぜい5段のみで、登りきると目の前には黒い壁が行く手をはばむ、よくわからない階段である。
ちなみにその階段の隣に外に続くドアがあり、開けると非常階段になっている。そこから見えるのは歪に校舎から生える【壁階段その2】だった。
「昔はどこかに繋がってたらしいよ!」
と、興奮気味の赤川をなだめつつ、【七つもない不思議その2】を聞くことにした。