憧れの天才科学少女はここが乙女ゲームの世界と知ったので研究するらしい
この「憧れの〜」の世界観だと
色々出来て楽しいです。
調子にのって
書いてみたかった“乙女ゲーム”ものにまでしてしまいましたw
科学部に入部してから2か月がたつ。
俺、高橋光太郎は屋上で告白を受けた。
だが、
俺には先輩を越えるという目標があるから断った。
先輩こと峰川皐月は科学のスペシャリストだ。
俺は先輩に憧れている
だから、きちんと断った筈なのだが……
「え?」
キョトンとする女、えーっと
佐伯春さんだっけか?
普通、告白を断られたら泣くか怒るかしないか?いや、今までの経験ではその2択しか無かった。そんな斬新な反応されると流石に困る。
「私、何処かで間違えて他の人のルートに入っちゃった?」
とポツリと呟く。
うっそ!え、嘘よ。私、間違えた筈ないわ…だって、ちゃんと学力値も上げたし…そうよ、この間の中間テスト!私、1位取ってたもの。大丈夫。間違えて無いわ。
え、じゃあなんで?
まさかバグ⁉︎
「……すみません。
部活あるので、帰ってもいいですか?」
いや、相手はなんか黙って考えてるみたいだし?
よくわからないけど、
「間違えた」とも言った。
なにより、はやく実験の結果が見たい。
「待って!私もその部活に行ってもいい?」
「え?」
俺が返事をする前に
彼女は「はやく行くわよ、科学室でしょ?」
と言った。
「こんにちは
君は……確か、佐伯春君だね」
先輩は突然、「失礼するわ」と部室に入ってきた彼女のことを知っていたようだ。
「先輩、……彼女と知り合いですか?」
「いや、会ったのは初めてだ。
ただ今年の1年生で全教科満点の成績で試験に合格した生徒がいる、と聞いてな。
調べてみたら、その生徒は過去数回にわたり物理学の研究において素晴らしい成果を出しているらしい。
それが、彼女…佐伯春君だ。」
物理学、研究の?
ていうか先輩噂好きだな。
「まぁ、君はどちらかというと科学の方が専門みたいだからな。
知らないのも無理は無い。
気になったことはきちんと調べた方が良いぞ?むしろ、君は彼女と同級生だろ。何故知らないんだ…」
ゴホン。
彼女、佐伯春はわざとらしい咳払いをして睨んで…、見つめてくる。
「人の前でいちゃいちゃしないでくれる?」
全く腹立たしいわ。と勝手に椅子に座った。
……長居するつもりなのか…そして、やっぱり睨んでたのか…
「で?本題に入ってもいいかしら?」
ちゃっかりとお茶を用意していた先輩が「あぁ、待たせたな。」と言い会話の体勢はバッチリに整っていた。
「私には前世の記憶がある。」
彼女は真剣な顔をして言う。
何変なことを言ってるんだ?
この子、電波なのか?
俺がそう混乱していると
「ほぅ、興味深いな」
と先輩は眼を輝かせた。
「先輩⁈そんな話を信じるんですか?」
「確かに前世の記憶がある、というのは珍しいことであるが実際に世界的に見て全く無いというわけでは無い。
トラウマなんかが前世の記憶と繋がりがあるという話が多い。
でもそれは殆ど無意識下の状態だ。
君は何故はっきりと断言するんだ?」
前半は僕に説明するように、
後半は彼女に話を促した。
「私は小さい時から
とある学校の生徒のプロフィール、この学校の校舎の構造、学校行事…ある程度のことは知っていたわ。
何故ならば
前世で発売されていたゲーム
『学園マナビューム〜恋も勉強も君と一緒に〜』ってゲームと全く同じだったから。」
なんだそのゲームは?
ふざけた名前だな…
彼女が言うには、
それは所謂乙女ゲーらしい。
まぁ、ゲーム自体は凄く簡単で初心者向きなのよね。
他のゲームみたいに際どいとこもないし、だいたいクイズに正解したら勝手に好感度も上がるし…
元が携帯ゲーの移植作品だしね。
「そう、光太郎君。
貴方はそのゲームの攻略対象キャラなのよ」
だから貴方のことは大体知ってるわ
「家族構成は、両親・妹・兄・姉の6人家族。趣味は、科学研究。あと峰川皐月先輩の研究を調べること。嫌いなものはピーマン・国語・非現実的なこと
好きなものは科学・先ぱ…」
「うわああああああっっっつつつ!」
なんでそんなこと知ってるんだ!
…いや、あれか、人間として好きって意味か。ふー、先走っちゃったぜ。
「……」
2人が呆れた様に見てくる…
「光太郎君が私の事を好きなのは皆知ってる上にそれだけでは噂を掻き集めた、もしくはストーカーしただけにも考えられるが?」
……え?
え、ちょっと待て?
「そうね。だけど……ちょっと光太郎君、こっちに来てもらえるかしら?」
そう言って彼女は僕の耳にだけ聞こえるように小さく囁いた。
「なななななな、なんで!
なんでそんなことまで知ってるんだ、君はっ……⁈」
彼女は僕だけしか知らない
……先輩にすら言ってないことを知っていた。
「ふふ、貴方とのイベントで貴方が教えてくれたの。」
彼女は悪魔の様な美しい微笑みを見せた。
「ふむ。では、次に……
ゲームの展開を聞いてもいいか?」
現状としては
この世界はゲームであったこと
ここにいる光太郎君は攻略対象キャラであることがわかった。
「先輩は信じるんですか?」
「実際に君以外知らないことを彼女は知っていた。ならば、可能性として考えるべきだ。
また、君は攻略対象キャラとして関わっているのだし知って損になることでも無い。」
(先輩が、俺のことを心配してくれている……?)
「それについては大丈夫よ、心配することないわ。今の所は。
さっきも言ったけど
このゲームは乙女ゲームって言っても殆どクイズゲームに近い形が取られてるわ。
好感度を上げる為にはクイズに正解しなきゃいけない。あくまで乙女要素は殆どおまけ。イベントはとても短いの。
(まぁ、だから一部では糞ゲーとも言われたけど…)」
でも、ほら
ゲームとは違ってここではクイズを出してくれる人もいなければ
選択肢もないじゃない?
取り敢えず
その、クイズにあたるのが入学試験・中間テストだと思ったの。
「なるほど。
だから君は1位の成績を取ったのだね。
では、君は光太郎君を攻略するつもりだったのか?」
「えぇ、そうよ。
このゲームね、イベントごとにキャラが雑学を教えてくれるの」
クイズもそのキャラの特性によって変わるわ。
例えば……
料理が得意のキャラだったら
料理に纏わるクイズをだす。
そしてイベントシーンでは、料理に纏わる雑学を教えてくれるの。
「私、この世界を受け入れることが出来なくて……現実的に考えて、今いる世界がゲームとかおかしいでしょ?
もしかしたら今私は寝ていて、この世界は私の脳が作り出した夢ではないか?とか……色々考えて頭がおかしくなった結果、
ゲームの世界に入ったのではないか?
とか馬鹿なことまで考えちゃったの。だって、夢ならもう私にはどうしようもないわ。
けど、この仮説なら調べようがあるじゃない。」
だから、物理。
私は、分子とか電気とかの研究をしたわ。
元がゲームなのだからそこに繋がるかもしれないと思ったの。
そうやって研究していった結果……
私は物理学に目覚めたわ。
むしろ、恋愛とかどうでもいい。
「光太郎君、貴方はクイズの分野で“勉強”を担当していたの。
だから、貴方を攻略していくことで新しい知識を得ようと思ったのよ。
私の物理に、貴方の科学が加わればこの世界の謎が解けそうじゃない?と、思ったのだけど……」
言葉をやめて
彼女は先輩をじっと見る。
「貴女の方が光太郎君より科学に通じていそうね。」
先輩はニヤリと笑う
「……面白い。
ゲームと同じことが起こる世界か……研究のしがいがある。」
あぁ、もう駄目だ。
先輩は一度没頭したら止まらない。
「これからよろしくね?」
なんて
乙女ゲームの主人公のように
彼女は可愛らしく笑った。
続くかどうかは謎。