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第2話 少年の目覚め

「……で、どうだったの?」

ほのかなかがり火だけが光源の部屋の中で、白い髪の少女は一人の女性に向けて問いかけていた。身長からすれば、20代前半とでも言ったところだろうか。銀色の長い髪を三つ編みにして、赤と紺で派手に色分けされた下地にさまざまな星座の模様が刺しゅうされた、奇抜な服を身にまとっている。頭頂部に乗せられたような紺色の帽子には、赤十字があしらわれていることから、彼女の職業が医者であるとかろうじてわかる。

「まぁ、ただの風邪ね。そりゃあ無理もないわよ、竹林の中で寝ころんでいたら、風邪くらい引くわ。……それより妹紅もこう、ちょっとこれを見てくれないかしら?」

「ん?」

妹紅、とよばれた紅白装の少女は、女性が差し出してきたカルテを受け取って内容を確かめた。中身は、先ほど妹紅によってここに担ぎ込まれた少年の診断結果だ。しばらく見つめていた妹紅の瞳が、驚愕に見開かれる。

「…………永琳えいりん、これって!?」

永琳と呼ばれた女性は、しかし沈痛な面持ちで首を振った。まるで、言葉を口にすることをためらったかのように。

「……どうやって彼がこんな力を得たのかは、私にもわからないわ。なにより、その力はまだ『不完全』と言って差し支えない」

「ってことは、彼はまだ……」

続きかけた妹紅の言葉を、永琳が遮る。

「あくまでも仮定だけどね。……ともかく、彼に了承を得て、実験をやってみなければわからないわ。妹紅、その時はあなたからも言ってみてくれない?」

「……わかった。それで、具体的には――――」

二人の白髪の女性の会話は、それからもしばらく続いた。



~幻想入り小説「東方永刻翔」~

  第2話 少年の目覚め



***



「うぅん……」

意識を失ってしまったことを思い出しながら、うめき声とともに俺は目を覚ました。ぼやける視界を最初に埋め尽くしたのは、倒れたはずの竹林ではなく、木造りの家屋の天井だった。

誰かが俺を運んでくれたのだろうか?たしかに、近くに女の子がいたにはいた。だが、どう見積もっても同い年程度の少女に俺を担ぎ上げるほどの力があるだろうか。ほかの人間を呼んだということもあるだろうが、仮にそう仮定しておいてここはどこなんだろう?

「……あ、お目覚めですか。具合の悪いとこあります?」

ふと、すぐ近くから女の子の声がした。記憶にある、俺を助けてくれた少女のものとは違うが、それならば誰だろうか?疑問に思いつつ声のしたほう――枕元に首ごと目線を向けると、そこにいたのはやはりというか、俺よりもすこし年上くらいの背丈と容姿を持った少女。明るい紫色の髪の毛に、月食状態の月を思わせる赤い瞳。服装はいわゆるブレザー姿だったが、彼女にはとんでもない特徴があった。

――頭頂部から生えているソレはなんだ、耳か、ウサギの耳か。コスプレか、ブレザーにウサ耳とか誰得だよ!という思考をだいたい一瞬で終えた俺は、とりあえず「……はい、大丈夫です」とだけ返事しておいた。このままの勢いで俺に何が起こったのかを聞きたかったのだが、唯一の情報源たるウサ耳少女は立ち上がって障子に手をかける。

「師匠を呼んできます。少しお待ちくださいね」

それだけ言うと障子を閉め、足早に立ち去ってしまった。いろいろ突っ込みどころはあったがまぁいいかと割り切りつつ、上半身を中途半端に起き上がらせ、障子に向かって手を伸ばしたままという間抜けな格好を直す。

やることもないので周囲を見回すと、俺が寝かされていた部屋は、いたってどこにでもありそうな和室だった。いわゆる砂壁という、日本家屋特有の壁面が特徴的といえば特徴的か。あまり使われていない部屋らしく、ほのかに漂っている真新しいい草の匂いが何とも言えない気分にさせてくれる。

障子のほうに目をやると、日が昇っている時間帯らしく外は明るかった。直後、その障子に影がかかる。頭から突き出たウサ耳は、間違いなく先ほどの少女だろう。

いくばくもしないうち、静かに障子が開けられる。そこにいたのはやはり、先ほどのウサ耳少女だった。その後ろには、竹林で出会った白髪の少女もいる。

目立っていたのは、障子を開けた女性だった。朱色と紺色で大胆に分割され、星座のようなマークがところどころにあしらわれた奇抜な服を着ている。銀色の髪と銀色の瞳によってかたどられる、どこか浮世離れしたその顔は、柔和に細められていた。

「おはよう。気分のほうはどうかしら?」

その女性が、口を開きつつ布団の横に座った。意外と高身長らしく座高で負けているので、必然的に見下ろされる形になっているが。

「……大丈夫、です。あの、ここは?」

俺の質問に答えてくれたのは、先ほどのウサ耳少女だった。

「ここは『永遠亭えいえんてい』といいます。この方によって、倒れていたところを運んでもらったそうですよ」

そういってウサ耳少女が指し示した白髪少女は、肩を竦めつつため息をついた。厄介ごとに首を突っ込んでしまったな、とでも言いたげなその表情は、しかしどこか楽しそうな笑みを湛えている。

「竹林で妖怪に襲われているのを見たときは、さすがに肝が冷えたよ。私が介入しなけりゃ、今頃死んでいたかもね」

死んでいた、という単語が、俺の背筋を急激に冷やした。一瞬また意識が遠のくが、ここは安全だということを認識してかどうにか踏みとどまれた。そんな俺の顔色をうかがってか、銀髪の女性が少し顔を近づけてくる。

「体調のほうは何ともないかしら?ただの風邪だったけど、ひどい熱だったし……」

「だ、大丈夫です。……ありがとうございます」

誰に向けていったわけでもない――強いて言えば目の前の三人に向けて、だが――お礼で、銀髪の女性はまた柔らかく微笑んだ。

というか俺、風邪ひいてたのか。どうりで逃げ回っている間は意識がもうろうとしたわけだ。そう考えると、白髪の少女に助けられたのは本当に幸運だったといっていいのかもしれない。感謝の言葉を一言でも述べようと口を開きかけたその時、まさにその白髪少女が先んじて口を開いた。

「さて、少し聞きたいことがあるんだ。構わない?」

「……え、あぁはい。答えられるならなんでも」

とっさに出た言葉だったが、命の恩人である手前断ることはできない。彼女の言うことにはできるだけ従って恩返しのつもりにしよう、などと考えつつ、少女からの質問に答える体制に入った。その少女は、銀髪の女性の横でワイルドにあぐらをかいて座る。

「じゃあ一つ目。……あなたは、どうしてあんなところで倒れていたの?」

「えーと……信じてもらえるなら話します」

俺の言葉に、少女はかくりと首を縦に振った。肯定、とみなしていいことにして、どう話したものかと十数秒悩んだ末、正直に話すことにした。

「……なんであそこに倒れていたのかは、覚えてません。ただ、自分の家で寝こけていて」

「気が付いたら見知らぬ竹林の中、ってことか」

続きを先に言われたことにすこし驚きつつも、「はい」とだけ言っておく。直後、難しい顔で白髪少女が唸り始めた。

「……どうせまたあいつの仕業だろうなぁ。最近多いって聞いてるし……」

はぁー、と長い溜息をつきつつ、また唸り始めた少女を見て苦笑する銀髪の女性が、続けて俺に向けて口を開く。

「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は『八意永琳やごころえいりん』。この永遠亭で、医者をやっているわ」

銀髪の女性――永琳の言葉で、ようやく俺がここにいた理由を悟った。つまり、この永遠亭というのは病院のようなものなのだろう。風邪をひいて倒れこんだ俺を、いましがた目の前でぶつぶつ呟いている少女や協力者が運んでくれた、ということなら、つじつまは合う。そうなると、永琳に腕を引かれて横に座ったウサ耳少女も医者の類だろうか。見た目からしてそうは見えないが、外見で判断するのはよくないのかもしれない。そんなことを考えていると、そのウサ耳少女が小さく頭を下げた。

「私は師匠……八意永琳の弟子の『鈴仙れいせん優曇華院うどんげいん・イナバ』と申します。長いので、好きに呼んでくださっていいですよ」

むしろ名乗らないほうが愛称をつけられてよかったのかもしれないウサ耳少女――鈴仙は、傍らに置いてあったカルテのようなものを取り出す。俺のものだろうかと考える前に、永琳が白髪少女の服を引っ張りながら笑って口を開く。

「で、この難しい顔の子が『藤原妹紅ふじわらのもこう』。彼女は竹林に住んでて、この永遠亭までの案内と護衛をしてくれているのよ」

紹介された白髪少女――妹紅はまだ考え事をしているらしく無反応だ。その様子に永琳が苦笑しつつ、再度口を開く。

「さて、あなたはここに来たばかりでいろいろ混乱しているでしょうから、一つずつ説明していくわ」

「お願いします」

軽く礼をし、説明を始める永琳の言葉に耳を傾け始める。

ここまでやっておいてあれですが、実はまだ内部の詳細なプロットができていないんですよねw

一応この後の予定では、一時永遠亭を出て人里に行く予定です。が、まだほかの行き先が決まっていないため、ここを読者の方に決めていただこうと思います!

一応候補としては

A:紅魔館

B:守矢神社(妖怪の山)

C:博麗神社

の三つがございます。このうち博麗に行くのは確定なんですが、守矢と紅魔はどちらか片方のみに行くことになりそうです。

しかも内部のお話も全く手を付けてない状態なのでどうしたものか……w

というわけで、読者の方にどこに行ってほしいか(博麗の場合は優先度が上がるということで)アンケートを実施いたします!

展開自体への影響は(たぶん)ないので、お好きに選んでいただいて構いませんよー。


2014/02/03…アンケート締め切りました。

行き先をお楽しみに!

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