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旧作1-1  作者: 智枝 理子
終章
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終章

 ラングリオン王都、サウスストリート沿い住む占い師。

 ラングリオンの王族をはじめ、国外からも熱心に通う人間が居るほど人気のその店は、平日の午前しか開店しない。

 しかし、その占い師が占いたいと願う者には、裏口の扉が開かれているという。

「いらっしゃい、エルロック」

 裏口の扉を開いたのは、金髪に紅の瞳を持つ少年。

「待っていたよ」

「来ることがわかってるのに待つのか」

「来ることを強制できる力ではないよ」

「そうだったな。…お前の予言、当たらなかったぞ」

「当たったじゃないか」

「どこが」

「愛する者と殺しあっただろう」

「あれは、リリスだ」

「リリスは愛せないか」

「何言ってるんだよ」

「対になる魂は、惹かれあうものだ」

 占い師が、鍵を挿しっぱなしにした一つの箱を出す。

「何だよ、それ」

「リリスの魂を封じている」

「なんだって?」

「お前は触らない方が良い」

「なんで、そんなものがここにある」

「お前の血を使って、リリスの魂を呼び寄せたんだよ」

 占い師はそう言うと、箱を掲げ、鍵を抜く。

 そして、鍵穴に口を近づけ、息を吸う。

「千年も生きた魂なんて、なかなか食えないな」

「…食ったのか?」

「そうだ」

 占い師は箱を開く。エルロックが身構えたが、中身は、空っぽ。

「魂を閉じ込めるなんて…」

「これは封印の棺と同じものだ。あれはもともと、神が罪深い魂を閉じ込めておくために作ったもの」

「なんで、そんなこと知ってる」

「お前の中では、答えが出ているのではないか?」

 口を閉ざした相手に、占い師は笑う。

「お前が悪魔にならないのなら、私もここに居る理由はない。私はここを去るつもりだ」

「去る?」

「私が求めるのは悪魔の魂だけ。彷徨える悪魔の魂を、死者の世界に送るのが役目だ」

「俺は、まだ悪魔になる素質を持ってるんだろ」

「持っている。でも、お前とリリーシアの運命は消えた。私はもう、お前たちの未来を見ることができない」

「消えた?」

「そうだ。一度死んで蘇ったから。だから、もう、何に怯えることもないだろう」

「大切なものを失うことは、もうないっていうのか」

「私に聞くな。すべては不透明。お前の生き方次第だ」

「…俺の運命って、なんだったんだ?」

「聞いたら後悔するぞ」

「聞きたい」

「あなたは、求めなければ、すべて手に入る運命。ただし、求めれば、失う」

「なんだ、それ」

「昔、同じ運命の男が居た。お前はそいつと同じ。力を求めなかったばかりに大いなる力を手に入れ、愛する者を失い、魔王と共にその魂を消滅させた」

「光の勇者か」

「そうだ。お前は運命を越えた。稀有な存在だ」

「リリーのおかげだ」

「そうだな。こんなに相性の良い運命もなかっただろう」

「相性の良い運命?」

「他人の運命については語れない。…さぁ、話しは終わりだ。愛する者と幸せにおなり」

「お前にそんなことを言われる日が来るとは思わなかったな」

「人間は、私たちにとっても、精霊にとっても愛しい存在だからな。おめでとう、エルロック」

「ありがとう」

「さよなら、セッタルシュ」

「七つを統べる者?」

 占い師は笑う。

「七つの精霊に愛された勇者」

 これで、すべて終わり。




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