終章
ラングリオン王都、サウスストリート沿い住む占い師。
ラングリオンの王族をはじめ、国外からも熱心に通う人間が居るほど人気のその店は、平日の午前しか開店しない。
しかし、その占い師が占いたいと願う者には、裏口の扉が開かれているという。
「いらっしゃい、エルロック」
裏口の扉を開いたのは、金髪に紅の瞳を持つ少年。
「待っていたよ」
「来ることがわかってるのに待つのか」
「来ることを強制できる力ではないよ」
「そうだったな。…お前の予言、当たらなかったぞ」
「当たったじゃないか」
「どこが」
「愛する者と殺しあっただろう」
「あれは、リリスだ」
「リリスは愛せないか」
「何言ってるんだよ」
「対になる魂は、惹かれあうものだ」
占い師が、鍵を挿しっぱなしにした一つの箱を出す。
「何だよ、それ」
「リリスの魂を封じている」
「なんだって?」
「お前は触らない方が良い」
「なんで、そんなものがここにある」
「お前の血を使って、リリスの魂を呼び寄せたんだよ」
占い師はそう言うと、箱を掲げ、鍵を抜く。
そして、鍵穴に口を近づけ、息を吸う。
「千年も生きた魂なんて、なかなか食えないな」
「…食ったのか?」
「そうだ」
占い師は箱を開く。エルロックが身構えたが、中身は、空っぽ。
「魂を閉じ込めるなんて…」
「これは封印の棺と同じものだ。あれはもともと、神が罪深い魂を閉じ込めておくために作ったもの」
「なんで、そんなこと知ってる」
「お前の中では、答えが出ているのではないか?」
口を閉ざした相手に、占い師は笑う。
「お前が悪魔にならないのなら、私もここに居る理由はない。私はここを去るつもりだ」
「去る?」
「私が求めるのは悪魔の魂だけ。彷徨える悪魔の魂を、死者の世界に送るのが役目だ」
「俺は、まだ悪魔になる素質を持ってるんだろ」
「持っている。でも、お前とリリーシアの運命は消えた。私はもう、お前たちの未来を見ることができない」
「消えた?」
「そうだ。一度死んで蘇ったから。だから、もう、何に怯えることもないだろう」
「大切なものを失うことは、もうないっていうのか」
「私に聞くな。すべては不透明。お前の生き方次第だ」
「…俺の運命って、なんだったんだ?」
「聞いたら後悔するぞ」
「聞きたい」
「あなたは、求めなければ、すべて手に入る運命。ただし、求めれば、失う」
「なんだ、それ」
「昔、同じ運命の男が居た。お前はそいつと同じ。力を求めなかったばかりに大いなる力を手に入れ、愛する者を失い、魔王と共にその魂を消滅させた」
「光の勇者か」
「そうだ。お前は運命を越えた。稀有な存在だ」
「リリーのおかげだ」
「そうだな。こんなに相性の良い運命もなかっただろう」
「相性の良い運命?」
「他人の運命については語れない。…さぁ、話しは終わりだ。愛する者と幸せにおなり」
「お前にそんなことを言われる日が来るとは思わなかったな」
「人間は、私たちにとっても、精霊にとっても愛しい存在だからな。おめでとう、エルロック」
「ありがとう」
「さよなら、セッタルシュ」
「七つを統べる者?」
占い師は笑う。
「七つの精霊に愛された勇者」
これで、すべて終わり。
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