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旧作1-1  作者: 智枝 理子
Ⅲ.共和国編
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 二本持ちの剣士はそんなに居ない。不便だから。

 戦う時に見るものは、相手の動きと剣の先だ。

剣を利き手に一本しか持っていない状態なら、それだけ見ていればいい。剣と自分は一心同体だ。慣れてくれば、その長さも自分の体になじんでくる。だから、相手に隙ができた時、何も考えずに攻撃を打ち込める。

一方で、二本持ちは複雑だ。

例えば相手に隙ができた時。右と左、どちらから攻撃するのが有効か。右から攻撃したなら左手をどこの位置に置いておくか。左手から攻撃したら、右手はどこに置いておくか。

常に、考え続けなければならない。そうすると、どうしてもタイムラグができるか、ポリシアのように同じパターンを繰り返しがちになる。

 それを避けるための一番簡単な方法は、片方を防御にまわすこと。そうすれば、思考のタイムラグが消える。たとえば、攻撃を右の武器にゆだねるなら、隙が出た瞬間は、どっちがベストか考えずに必ず右を出す。そして、更に狙えるなら左をだせばいいし、なさそうなら次の攻撃に備えた場所に置いておけばいい。左手の置き場を右手の攻撃中に考えることで、思考のラグをなくす。その後、運良く相手の攻撃をはじければ、かなり有利になれるだろう。

 もう一つは、両方防御に特化すること。相手の攻撃を完全に封じて、絶対に攻撃可能なタイミングを計って、一撃で仕留める。俺は基本的に、両方を防御に特化させているんだけど。

 一番難しいのが、両方攻撃に専念する方法。というか、相手に攻撃させない方法。常に相手に防御行動しかさせず、自分で隙を誘導し、攻撃する。攻撃は最大の防御とは良く言ったものだ。本当にそんなことができる人間が居たら会いたくないけれど。

 そもそも、二本持ちっていうのは、防御がほとんどできない。

 長い剣を二本持って、それを振り回すなんて、どこかががら空きになるに決まってる。何よりも、両方の剣を一か所に集められれば、両手がふさがって何もできなくなる。俺が二本持ちの相手と戦うなら、相手の剣を一か所に集めるように誘導して倒すだろう。…魔法で倒した方が早いけど。

 リリーのようにガントレットを防具として装備するのも良いかもしれないが、それによって素早さを落とすぐらいなら、やっぱり、どちらかの剣を防御に回した方が良いという結論になる。

「ほら、できたわよ」

「女王の娘っていうのは、本当に戦いのセンスがあるんだな」

 ポリシアが、鞘を抜いた太刀と脇差を、それぞれ空中に回転させながら投げて手に取る作業を繰り返している。

「褒めてるの?」

「褒めてるよ」

 七日でここまでできれば素晴らしい出来だろう。

「明日は王都に着くし。これで最後だ。相手になるよ」

 レイピアを抜いて、構える。

「短剣は使わないの?」

「使ったら俺の負けでいいよ」

 ポリシアが構える。

「行くわよ」

 ポリシアは右利き。右手に太刀を、左手に脇差を持っている。

一撃目は太刀から。レイピアで右にはじき、空いた左側にレイピアを刺す。ポリシアは左手に持つ脇差でレイピアをはじいて、俺の右手へ。クロスした状態の太刀と脇差の間にレイピアの腹を当て、押し付けると、ポリシアが後方に下がる。

「刀をまとめるなって言っただろ」

 一撃、二撃、三撃。ポリシアの攻撃をレイピアで受ける。

 リズムも捕らえにくい変拍子で良い。

「しょうがないじゃない。脇差で防御しようとしたら、クロスしちゃうんだから」

「無理に防御しようとしないで避けろ。戦法が見え見えだ」

 この斬り込み方は、薙ぎ払い。

 癖は、そう簡単に抜けないか。

「エルが教えたんじゃない」

「俺が教えたことを繰り返してるだけじゃ、強くなんてなれないぞ」

 踏み込んで、太刀を刺してくる。レイピアを振り上げて太刀を上に向け、ポリシアの右手に移動しながら、レイピアの腹を首につける。

「脇差の位置が悪い。もう少し右に寄せていればこんなことにはならなかった」

「さっき、まとめるなって言ったじゃない」

 首からレイピアを離して、二歩引く。

「平行に持つのとクロスさせるのは違う」

「こういうこと?」

 ポリシアが両手を振り上げて、両方の刀を振り下ろす。

 それをかわして、二つの刀をレイピアで地面にたたきつけると、ポリシアがよろける。

「なんだそれは。殺してくれって言ってるようなものだぞ」

「あぁ、もう!頭がこんがらがっちゃう!」

 ポリシアが太刀を振り上げる。

 それをかわして、脇差をレイピアで斬り上げて、胴体にレイピアの腹をつける。

「自分が何回死んでるかわかるか」

 レイピアを引く。

「今日はここまで。稽古なら、俺よりもリリーにやってもらえ」

「リリーとは勝負したかったのに」

「一撃で勝負が決まるぞ」

「リリーだって、二本持ちの相手と戦ったことないでしょ?」

「俺が見ても隙だらけなのに。リリーが見逃すわけないだろ。無謀な挑戦はやめるんだな」

「はぁい」

 明日は、ようやく王都に帰れる。

 一月ぶりだ。リリーは元気にしてるかな。



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