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旧作1-1  作者: 智枝 理子
Ⅲ.共和国編
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「エルロック・クラニス様ですね」

「十四日ぶりだな」

「失礼ですが、その瞳の色は」

 あ。目薬をするの、忘れてた。

「知らないのか。赤ワインを飲み過ぎると目が赤くなるんだよ」

 受付嬢が、笑いだす。

「えぇ。聞いたことがあります。…どうぞ。お気をつけて」

 出国の印をもらう。

「あぁ」

 あれ。あっさり通してくれたな。

「エルー。早く来なさいよ」

「あぁ」

 ラングリオンの関所で入国印をもらう。

「何、口説いてるんだよ」

「何が?」

「行きで関所を抜けられたのって、あの受付嬢を落としたからじゃないのか?」

「そんなわけないだろ」

「ならどうしてあの人、笑ってたんだ」

「聞くなよ」

 子供騙しなんだから。

「最早、才能だよな」

「何が」

「リリーシアちゃんも苦労する」

「苦労?」

 さっきから、何の話しだ。

「ってわけだから。ここで一旦お別れだ」

「私たちは、ここから真っ直ぐ、北を目指す」

 カミーユたちは、北のアスカロン湾から船を乗り継いでグラシアルを目指す。俺は王都を目指して、ここから北東に向かう。

「お前たちは真っ直ぐ王都に行くんだろ?」

「あぁ。…ん?待て。今、なんて言った?」

「ん?」

「たち、ってなんだ。俺は一人で帰るんだぞ」

「私も一緒に行くのよ」

 ポリシアと?

「なんで」

「文句あるの?」

「アリシアと一緒に行けばいいだろ」

「頼むよ、エルロック。ポリーは早くリリーに会いたいんだ。私たちは、目的地に着いたら、すぐに魔法陣の制作に取り掛からなければならない」

「手伝えばいいだろ?」

「私、魔法陣なんて描けないわよ。あれって、ちょっと間違えただけで、やばいんでしょ?足手まといになるもの」

 そこまではっきりと言えるなら清々しいな。

「それに、あなたに稽古をつけてもらう予定なの」

「稽古?」

「そうよ。あれだけ私を貶しておいて、自分の実力を見せないなんてあり得ないわ」

 何、勝手に決めてるんだ。

「カミーユ。こいつを引っ張っていけ」

「ごめんなエル。俺はこれからアリシアと逃避行だ」

「エル、ポリー。先に行って待っているぞ」

「おい!」

 このお転婆の相手をするなんて。冗談じゃないぞ。

『まぁ、仕方ないよね』

「早く次の街に行くわよ。着いたら特訓してもらうんだか」

「予定が狂いっぱなしだ」

『さんざん思い通りにやって来たツケが回って来たんだよ』

 それって、良いことなのか悪いことなのかの判別がつかないぞ。

 あぁ。面倒だ。


「違う。せめて、薙ぎ払う姿勢から斬り上げるぐらいの動きをしてみろ」

「この体勢からどうやって、そんなことできるのよ!」

「リリーはできるぞ」

 ポリシアが右手に持つ太刀を、短剣ではじき飛ばす。太刀は宙を舞って、ポリシアの後ろの地面に刺さる。

「自分の持ってる剣を手放すなんて、どれだけ油断してるんだ」

「悪魔!」

「誰が、悪魔だ。稽古をしろって言ったのはお前だぞ。力はあるんだから、俺にはじかれたぐらいで剣を落とすな」

「絶対、当ててやるんだから」

「それ以前の問題をどうにかしろ」

『エル、前よりも強くなってるよね?』

「前って、いつと比較してるんだよ」

『リリーと戦ってた時』

「それは…」

 言おうか悩んだけど、やめておこう。

 たぶん、言ったらリリーが怒りそうだから。

「リリーのおかげじゃないか?」

「何、暢気におしゃべりしてるのよ。続きは?」

「疲れた。休んでるから、その刀でお手玉でもしてろ」

「お手玉?…馬鹿にしてるの?」

「まだ、刀の重さが手になじんでない。感覚が身に着くよ」

「失敗したら危ないじゃない」

「鞘をつけてやれよ」

 ポリシアが、俺に向かって舌を出す。

 そして、言われた通り鞘に納めた太刀を上に飛ばし…、

「いったぁ」

 頭に落とす。

 まぁ、その内出来るようになるだろう。




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