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旧作1-1  作者: 智枝 理子
Ⅲ.共和国編
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『エル、一応、教えておいてあげようかぁ?』

「ん?」

『今回は何を頼まれていたんだっけぇ?』

―マーメイドの鱗と呼ばれる琥珀があるらしいよ。

―それでブローチでも作ろうと思ってるんだ。

「あー」

「どうしたんだ?エル」

「ちょっと、買い物に行ってくる。宿、前と同じ場所だろ?」

「あぁ」

「買い物?何買いに行くのよ」

 山の麓の街なんだから、原石を取り扱ってる店があってもおかしくない。

「アレクへの土産」

「…了解」

 カミーユたちと別れて、メインストリートを選びながら、周囲を見回す。

「なぁ、この辺りで宝石や鉱石を扱ってる店って知らないか?」

「え?…あっちの方じゃない?」

「助かる」

 何人か通行人に声をかけながら歩き、鉱石を扱う店の通りへ。

 どの店にも琥珀は置いていそうだな。

 というか、この山ってそんなに琥珀がとれるのか?露店まであるなんて。

「兄さん、良いのあるよ」

「マーメイドの鱗を探してるんだ」

「あぁ、そういう珍しいのは宝石店にあるぜ」

「お勧めの宝石店はあるか?」

「なんか買ってくれるなら、信頼できるところを教えてやっても良い」

「ん…。じゃあ、その髪飾りと、ポーラータイをもらうよ」

 ルイスとキャロルの土産にしよう。

「あと、その眼鏡もくれ」

 リリーに似合うだろう。

 包んでもらって、代金を渡す。

「お勧めは俺の後ろにある店だよ」

「お前の店か?」

「違うよ。マーメイドの鱗もあるし、変わった石もあるんだ。見ていったら良い」

 変わった石って何だ?

 男の後ろにある店に入る。

「いらっしゃいませ」

「マーメイドの鱗を探してるんだけど…」

 あれ…。

「マーメイドの鱗でしたら…」

「これ、なんだ?」

 カウンターの脇にある、透き通った青みのある球体の石。

「珍しいでしょう。真珠なんですよ」

「真珠だって?青い真珠?」

「マーメイドの涙。泡になる直前に流した涙と言われているんですよ」

「いくらだ」

「…これは、お売りできません」

「店に並んでるのに?」

「えぇ。右から流れた涙と、左から流れた涙。二つで一セットなんです。ですから、揃うまで、お売りできないんです」

「もう一つは何処にあるんだ?」

「わかっていません」

「売ってくれ。俺が探す」

「探す?」

「こんな山奥の店で待っていたって、見つからないだろ。俺が探して二つを一つにする」

「…ですが」

「いくらだ。金貨三枚ならすぐに出せる」

「えっ」

「それ以上なら、少し時間がいる。どうしても欲しいんだ。売ってくれ」

「あの…」

「絶対似合うと思うんだ」

「プレゼント、ですか?」

「あぁ。イヤリングにして渡すよ。それなら二つ必要だ。片割れも必ず探す」

「…そうですね。探して下さると言うのなら、お売りいたしましょう」

「ありがとう」

「ですが、金貨三枚ではお売りできません」

「いくらだ」

「銀貨一枚で結構です」

「え?貴重なものなんだろ?」

「いいえ。手にとってご覧ください」

 これ、傷がついている…?

「もともと、一つだったのです」

「二つの真珠が一つにくっついてたってことか?」

「はい」

 だから、二つで一セットなのか。

「じゃあ、銀貨三枚置いて行く。彼女へのプレゼントが銀貨一枚なんて失礼だろ」

「左様ですか」

 店主は笑って、真珠をケースに包む。

 早く見つけ出して、イヤリングを作ろう。

 ポラリスに聞けば在りかが解るだろう。

『エル。何しに来たんだ』

『そうだよー』

「あ」

 また、忘れるところだった。

 店を出ようとして、引き返す。

「マーメイドの鱗も買わなきゃいけないんだった。ブローチになるサイズで探してくれないか?」

「あぁ、そうでしたね。少々お待ちください」

『エルってさー。本当に忘れっぽいよね』

『集中しちゃうと、周りが見えなくなっちゃうのよねぇ』

 悪かったな。

 だって、しょうがないだろ。

 マーメイドの涙なんて。

 きっと、喜んでくれるに違いない。

 片割れは、リリーと一緒に探しに行こう。



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