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旧作1-1  作者: 智枝 理子
Ⅱ.王都編
21/45

28

 王都守備隊三番隊宿舎。

「エルロック。久しぶりだな。お前が守備隊に何の用だ」

「…頼みがあるんだよ」

「頼みぃ?」

 ガラハドは朝から訓練所で、隊員の訓練を見守っている。

「なんだ?」

「訓練用のレイピアを貸してくれ。一日でいいから」

「お前、自分で持ってるだろ?わざわざローランまで買い付けに行ったやつ」

 ローラン。ラングリオンでも有数の名工が揃う鍛冶屋の街。

「リリーに壊されたんだよ」

「リリーシアに?それなら買えば良いだろ」

「買うわけにもいかない」

「なんでだよ?」

「リリーが作るって言うから」

 ガラハドは快活に笑う。

「いやぁ、惚れた女には弱いな、エルロック」

「うるさいな。だから、借りに来たんだよ」

「持ち出しは禁止だ。使いたいなら、うちの隊員と遊んでいけ」

「なんで守備隊の相手なんてしないといけないんだ」

「良いだろ?俺とお前の仲じゃないか」

「しばかれた覚えしかないぞ」

「本当に、悪餓鬼だったからなぁ」

 思い出したくない。

「午前中だけなら付き合うよ」

 訓練所の脇にある武具収納庫へ向かう。

「隊長、エルロックって魔法使いの?」

「あぁ」

「なんでレイピアなんて使うんですかね?」

「さぁな」

 詮索しないところが、ガラハドらしい。


 右、左。ちがうな、予測可能な動きをしていれば、すぐに捕らえられる。ここは、振り上げる腕の動きをしつつ、薙ぎ払ったら良いかな。

 突剣と言っても、フルーレと違ってレイピアには両刃がついているから、攻撃の種類が多彩だ。

 もちろん、細身の剣だから、大剣と真っ向勝負なんてしたら、リリーがやったように破壊される可能性があるけれど。

 そして、レイピアのガードの装飾は、相手の剣を絡め取るのに向いている。

 それが、この剣の面白いところだ。

「…なんだよ、もうおしまいか?有翼の三番隊の名が、聞いてあきれるぜ」

「お前魔法使いだろ?」

「なんでそんなに強いんだよ」

「ばーか。俺が本格的に魔法使うようになったのは二年前だぜ」

 それまでにレイピアの基礎は鍛えている。護身用だけど。

「隊長、聞いてないっすよ」

 ガラハドは笑う。

「心配するな。お前らが相手にしてるのは魔法剣士だ。十分戦えていたぞ」

 やっぱり、魔法を使っていること、ガラハドにはばれているか。

「俺が本気で魔法使ってたら、こんなもんじゃすまないぜ」

 空を見上げると、太陽が高い位置にある。そろそろ昼かな。

「エル!」

「リリー」

 訓練所の入り口にリリーが居る。

「こんにちは、隊長さん」

「あぁ。こんにちは。その剣は、エルロックのか?」

「はい」

「もうできたのか?」

 リリーの傍に行って、真新しい鞘に収まるレイピアを受け取る。

「うん。…使ってみて。自信はあるけど、使い心地が悪かったら、また作り直すから」

 鞘を腰につけて、剣を抜く。

「軽い」

 昨日、鍛冶屋で持ったやつとは大違いだ。

 強度はどうかな。

「よし。リリー、相手してくれ」

「え?」

「それでいいよ」

 リュヌリアンを指す。

「危ないよ」

「危なくなったら魔法を使うから平気だ」

 砂時計を出して、ガラハドに渡す。

「ガラハド、時間計ってくれ。体力が持たないから、タイムリミットは、この砂時計が落ちるまで」

「…当てるよ」

「かかってこい」

 訓練場の中央部へ行き、構える。

 リリーもリュヌリアンを抜く。

 …冷や汗が出る。リュヌリアンは、思った以上の迫力だ。あんまり対峙したくない相手だな。

「はじめっ!」

 ガラハドの声と同時に、リリーが飛ぶ。

 振り下ろされた剣に対し、左手をレイピアに添えて受け止める。

 手が、しびれる。

「!」

 意外だったのだろう。リリーが驚いた表情で俺を見る。

「良い剣だ」

 なんて強度なんだ。大剣を受け止められるレイピアなんて。

「良かった」

 リリーは目を細める。

 こんなに軽くて丈夫な剣を作るなんて、天才じゃないのか?

 リリーは、一歩下がって剣を振り上げる。

 それを受け流して一歩引く。

 追いかけて繰り出される剣撃をレイピアで受け止めつつ、その力を流し、剣先を誘導する。

 リリーの力を込めた一撃を避けて、リリーの左へ。

 追いかけて来た剣の先をレイピアで突いて、風の魔法で大きく下がる。

 方向を修正されたリリーの剣が、一歩遅れて、俺が居た場所を斬る。

 これって。

 リリーが風の魔法を計算に入れて攻撃しているのは明らかだ。

 続けて、リリーが踏み込んで剣を伸ばす。

 早い。けれど。

 伸びてきた剣を、レイピアのガードで絡め取って、地面にたたきつける。

 流石に、この大きさの剣だと、ほとんど掴めない。

 リリーの剣は地面にたたきつけられることなく持ち直し、俺の胴体を狙う。

 闇の魔法で影を作って、風の魔法でリリーの左に飛ぶ。

「え?」

 おそらく、斬ったような感覚に陥っただろう。今のは残像だ。

「よそ見するなよ」

「!」

 耳元でそう言って耳を舐めると、リリーの背後に回る。

 リリーは剣を振り回して振り返ったが、対象を定めない攻撃は空を切る。

 一歩、二歩。攻撃を繰り出しながら進むリリーに合わせて、後退する。

 攻撃が重い。疲れてきた。

 振り下ろされた攻撃を避けて、リリーの上を飛ぶ。

 振り上げられた剣にレイピアを当てて、反動を利用して、更に飛び、着地。

「そこまで!」

 良かった。これ以上戦ってたら、体力がやばかった。

 レイピアを鞘にしまって、リリーに手を差し伸べる。

「ありがとう。リリー」

 リリーが握手に応じる。

「エルは強い。リュヌリアンでも勝てないなんて」

「勝たせるつもり、ないからな」

「明後日までに、もっと強くなるよ」

 周囲で拍手が起きる。

「ガラハド」

 リリーとガラハドの傍まで行く。

「面白いもの見せてもらったな」

 そう言って、ガラハドが投げた砂時計を受け取る。

「隊長さん。私、もっと強くなりたい」

「あぁ、鍛えてやるよ」

「…は?」

 ちょっと待て。

「私、どうしてもエルに勝たなければいけないの」

「なら、俺がこいつに勝てるように鍛えてやる」

「待てよ、おっさん。余計なことすんな」

「何だ?悪餓鬼小僧が。困ることでもあるのか?」

「ある」

「ほぅ。残念ながら、俺にはない。それじゃあ、リリーシア。俺が稽古をつけてやる」

「はい!」

 それ以上強くなって、どうするんだよ…。

「リリー、稽古は後だ」

「え?」

「昼が先」

「あ、そっか。隊長さん、午後に来ますね」

「おぅ、待ってるぞ」

 リリーの手を引いて、訓練場を出る。

 何食べようかな。

「どこ行きたい?」

「どこでもいいよ」

 普段は…。

 あれ?ラングリオンに来てから、リリーと出かけてない?

 レイピア探しに付き合ってもらったぐらいか?

 どこに連れて行こう。

「今はベリエか…」

 あそこに行ってみるか。

「エル?」

「行きたいところがある。サンドイッチでも買っていこう」

「うん」

 昼時で賑わう市場にある、馴染みのサンドイッチ屋に行く。

「おや、エルロックに、この前のお嬢ちゃん」

「こんにちは」

「来たことあるのか?」

「ほら、キャロルとお菓子の材料を買いに行った日。お昼はここで買って行ったんだよ」

「あぁ…。そうだったな」

 店員が斬り込みを入れたバケットに、野菜とローストしたハムを挟んでソースをかける。

「ほらよ。いつものでいいんだろ?」

「あぁ。リリーは?」

「えっと…」

「嫌いなものがなければ適当に作るぜ」

「はい」

「どこにピクニックに行くんだ?」

「近所だよ」

「グラム湖まで?」

 王都の近郊にある湖。王都からは日帰りで行ける距離だ。

 王都の生命線であるシレーヌ河がそそぐ広い湖で、ラングリオンの初代国王が神から啓示を受けた場所であり、ラングリオン王国にとっての聖地だ。

 光と水の精霊が愛する場所で、湖の脇に光の洞窟がある。

「行かないよ。暇じゃないんだ」

「早く行かないと、もう散る頃だぜ」

「まだ散ってないのか」

 良かった。それなら、あそこも散ってないだろう。

「昨日の休みは、皆、花見だ。ほらよ」

「…花見?」

 リリーが首を傾げる。

「行くぞ、リリー」

 リリーの手を引いて、広場へ。

 ドリンクワゴンでオランジュエードを二つ買う。

「どこに行くの?」

「リリー、北はどっちだ?」

「えっ?」

 リリーがきょろきょろした後、城の方を指さす。

「正解」

「いくらなんでも、わかるよ!」

 あぁ、可愛い。

「これから行くところだよ」

「えっ?」

 城へ続く橋の先には、軍隊も通れる大きな城門。

 その門を守っているのは、大きな槍を持った二人の門番。

「エルロック様。今日はどのような御用で?」

「ピクニックだよ」

 門番が笑う。

「そうでしたか。どうぞ。まだ見頃ですよ」

「…あの、エル、」

「ん?」

「お城って簡単に入れるの?」

「庭ぐらいなら、誰でも入れるよ」

「そうなの?」

 門をくぐって、東側に続く道を歩く。

「休日は一般に開放されてる」

「今日は平日だよ」

「そうだったかな」

 ベリエの十七日だから、平日に決まってるけど。

 城の中に入るわけじゃないから良いだろう。

 リリーの手を引いて、庭園へ。

「ほら」

「わぁ…」

 まだまだ見頃とはいえ。来るのが遅かったな。

「あれ、何ていう木?」

「桜だよ」

「初めて見る」

「綺麗だろ。…ベリエの、ほんの短い間にしか咲かないんだ」

「そうなの?」

「ラングリオンに着いてすぐ来れば良かったな。きっと満開だったのに」

 リリーをほっといた罰かな。

「十分綺麗だよ」

「来年はグラム湖に桜を見に行こう。満開になったら、ここよりずっと綺麗だ」

「うん」

 牡丹の花を小さくしたような、桃色の花。

 一斉に花が咲き乱れると、今よりも一面が、春の色になるだろう。

「あっちにベンチがあるから、そこで食べよう」

 リリーを連れてベンチに座る。

 桜と、城のバルコニーが見える。

「エルは桜が好きなの?」

「そうだな…。時期が難しいからな。桜を見ると春が来たって思うよ」

「好きか聞いてるのに」

「好きだよ」

 リリーの頬にキスをする。

「あ、の…」

 あぁ、本当に可愛い。

「エル!」

 声が聞こえて、上を見上げる。

「アレク」

 バルコニーの上に金髪碧眼の青年が居る。

 あの瞳。

 右側は、良く見れば菫なんだけど。

 見る度に思い出してしまう、少し懐かしい色。

「久しぶりじゃないか。何やってるんだい」

「見て分かんないのかよ」

「上においで」

「デートの邪魔をするな」

「それは悪かったね。…じゃあ、下に行こうか」

「忙しいんだろ」

「羽ペンは届いたよ」

「次はなんだ?」

「そうだね。琥珀なんてどうだい」

 琥珀は。セルメアの名産品だ。

 もう、次に俺がどこに行くか知ってるのか。

「琥珀ぐらい、ラングリオンでも買えるだろう」

「マーメイドの鱗と呼ばれる琥珀があるらしいよ」

 宝石は専門外だ。

「リリー、知ってるか?」

「え?…うん。石の中にひびがある琥珀のことだよ。中のひびが光を受けて輝くんだ。…前に、グラン・リューのところで見た化石もそう。化石になる過程で入る特別なひび。外部から加わった力では決してできない煌めきだから、とても貴重な琥珀だよ」

 貴重な石って。簡単に手に入るかな。

「博識だね、リリーシア」

「え?」

「それでブローチでも作ろうと思ってるんだ」

「わかったよ。探してくる」

「ありがとう。それじゃあ、ごゆっくり」

 アレクは手を振って去る。

「今の、誰?」

「知り合い」

「お城の中にも知り合いがいるの?」

 そうだな…。

「魔法部隊の駐屯所は、あの塔だ」

 西側にある塔を指さす。

「そうなんだ。…今の人、なんだかエルに似てるね」

「似てる?」

「うん。なんでかな」

 リリーは首を傾げる。

 リリーの勘はいつも的確だ。

『話しを聞かないところじゃない?』

「あぁ、そうかも」

 そう言ってリリーが笑う。

「何て名前の人なの?」

「アレクシス」

『えっ』

 イリスは知ってるか。

 リリーは、気づいてないみたいだな。

「言うなよ、イリス」

「イリス、知ってるの?」

『黙秘するよ』

 バニラみたいな言い方だな。

 あれは、フラーダリーの弟だ。


 ※


 リリーを訓練場に送った後。

「制服はどうした」

「持ってるわけないだろ。訓練に参加したこともないのに」

「持ってくる」

「待てよ、要らない」

 取りに行こうとするレティシアを止める。

「訓練に参加するのだろう?」

「参加するっていうか…」

「なんだ。歯切れが悪いな」

「魔法練習所を借りたい」

 魔法部隊が所有する、地下の練習所。

 多くの反魔法素材が埋め込まれていて、たいていの魔法を無効化する空間。

「お前の魔法は強すぎる」

「炎の魔法は使わないよ」

「それなら許可しよう」

 レティシアから鍵を受け取る。

「それと、三日後にまた出発する」

 明後日の、リリーとの勝負が終わった次の日。

「…仕方ない奴だな」

 あれ。怒ると思っていたのに。

「なんだ」

「今回は怒らないんだな」

「怒ってほしいのか?」

「そういうわけじゃない」

「陛下もお前には甘い。余程のことをしない限り、自由にさせよ、と仰せだ」

「一回しか会ったことないけど」

「殺されないだけ感謝しろ」

「殺しても構わなかったのに」

「本気で言ってるのか」

「…冗談だよ」

 あの時は死にたいと思ったけど。

 今でも、なんで自分が生きているのか、許されているのかわからない。

 すべて陛下の一存。

 全く、温厚な人だ。

「で?今度はどこへ行くんだ?」

「ラ・セルメア共和国」

 レティシアの顔が、あからさまに引きつる。

「聞き違いか?」

「いや、たぶん聞き間違えじゃないぜ」

「愚か者!前言撤回だ。出発は許可しない!」

「言ってることが違うぞ」

「撤回しただろう!死ににいくつもりか!」

「あー、もう、練習所借りるからな!」

「待て!エルロック!」

 走って部屋を出る。

 やっぱり怒るよなぁ…。

「あれ、エルロックさん。とうとう訓練に参加する気になったんですか?」

「ええと、ユベールだっけ?」

 魔法部隊の予備隊の制服だ。

「はい。覚えていていただいて光栄です」

「練習に付き合え」

「え?」

「ちょっと複雑な魔法をやりたいんだ」

「はい!是非!」

 ユベールを連れて、魔法練習所へ向かう。

「お前たち、出ておけよ」

『了解』

『了解』

『はぁい』

『それじゃあ、後でねー』

『え?どういうこと?』

 エイダは居ないみたいだな。

『ナターシャ、行くぞ。この空間は、私たちには息苦しい』

『そうなの?』

 当然だ。反属性、と呼ばれる素材で囲われた空間。

 その原理は、古代、魔法使いや錬金術師が精霊を捕まえる為に作った箱に由来する。

 魔法練習所に入って扉を閉める。

 さまざまな鉱石が埋め込まれた空間。その一つ一つが、精霊の力に対抗するための無機物。

「エルロックさんって、たくさん精霊を従えているんですよね?」

「あぁ。多い方だな」

「どうしたらそんなに契約できるんですか?」

「成り行きかな」

「成り行き?」

 メラニーは、マリーと一緒に光の洞窟で契約した精霊だし、ユールは実験をやっていたら出てきた精霊だ。

 エイダとジオは砂漠で契約して、バニラはフラーダリーと別れてついて来た。

 ナターシャは、オペクァエル山脈で出会ったばかり。

「羨ましいです。僕なんて、炎の精霊と契約するのにもすごく苦労して。今でも魔法を上手く使いこなせないです」

「ちゃんと精霊と会話してるか?」

「会話?」

「あぁ。精霊っていうのは人間が好きなものだ。契約できたなら、その精霊はお前のことが好きなんだよ。大切にすれば、その気持ちが力となって帰ってくる」

「そう、ですか?」

「そうだよ。それに、精霊を多く従えてるからって、強いわけじゃない」

「何故ですか?」

「魔法っていうのは、精霊との絆の力だ。繋がりが強ければ強いほど、より強く、より大きな力が引き出せる。一人の精霊とまっすぐ向き合うだけで十分強くなれるよ」

 フラーダリーがそうだった。

 俺は、バニラの本来の力の半分も引き出せていないだろう。

「エルロックさんは強いです」

「俺は強くなんてないよ。精霊と一緒に居るのだって、弱いからだ。一人じゃ何もできないから、誰かと一緒に居たいと思う」

 何度失っても、誰かと一緒に居たいと思ってしまう。

 たとえ、自分と居ることで相手が不幸になったとしても。

 自分が弱いのは誰よりも知ってる。

「かっこいいです!」

「…え?」

「僕、やっぱりエルロックさんみたいになりたい」

 今の話の流れの、一体どこでそう思うんだ?

「やめてくれ」

「何故ですか?」

「変なことを吹き込んだ、って俺がレティシアに怒られる」

 ユベールは笑う。

「隊長と仲が良いですよね」

「そう見えるのか」

「はい。隊長はエルロックさんを信頼してます」

「信頼には応えてないけどな」

 魔法部隊のことを考えるなら、王都から離れない。

「エルロックさんの、自由なところが良いって言ってましたよ」

「レティシアが?」

「はい」

 思ってもいないことを。

「ユベールは、強くなって魔法部隊を支えるのか?」

「はい、もちろんです。今は、風当たりが強いですが、いつか守備隊にも負けないぐらい、王都の皆に頼られる存在にしてみせます」

「それは心強いな。…頼むよ、レティシアのこと」

「え?」

「あいつは、一人でいようとするから。お前が強くなって、支えてやれ」

「…はい!頑張ります!」

「それじゃあ、始めるか」

 レイピアを出す。

「えっ、魔法じゃないんですか?」

「魔法だよ」


 ※


「だめだよ、エル」

「それしか言わないな」

 だめって言っても、抵抗しないのに。

「恥ずかしいよ」

「恥ずかしがっていいよ」

 もう、何を言われてもやめないから。

「だからっ…」

「可愛い」

 耳にキスする。

「今度は、戦ってる時にキスなんてしないで」

「なんで?」

「だって…」

「集中が途切れる?」

「うん」

「じゃあ、負けそうになったらキスすればいいか」

「だめ、」

 本当に、だめしか言わないな。

「やめてほしい?」

「やめないで」

 どうして、こんなに可愛いんだろう。

 やめられるわけなんてない。

 リリー。

 愛しくて愛しくてたまらない。



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