表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧作1-1  作者: 智枝 理子
Ⅱ.王都編
12/45

19

 ディラッシュを朝早くに出港した船は、次の日の昼頃にティルフィグン国へ到着し、同日の夜にラングリオンへ向けて出港した。

 順調な航海二日目の朝。もうすぐ、ラングリオンに到着するだろう。

 そういえば、今日は休日だ。

「港は混んでそうだな」

「どうして?」

「今日は八日だ」

「あぁ、そっか。お休みだもんね」

 一月は三十日あり、休日は、一日、八日、十五、十六日、二十三日、三十日。それは月の形状に由来する。すなわち、朔、上弦、望、既望、下弦、晦。

 月の休みに加えて、季節の変わり目である節句の期間も休みだ。

 次は立夏の四日間。三十日と一日を合わせれば、六日間の連休。

 一年は三七七日。三か月おきに節句が来る。

 節句は月の満ち欠けを修正する期間。本来の月の満ち欠けの周期は、三一、四一五九二六五三五八九七九三二三八…。いわゆる無比数。

 だから、暦は一月を三十一日周期にすれば、節句までに大きくずれないのだが、三十一という数字は古来から忌数として扱われている。月が完全にその姿を消す日だから。…全く、面倒な話しだ。

 その為、三十一という数字が暦に適応されなかった歴史がある。

 新年、立秋の五日間から始まり、ヴィエルジュ、バロンス、スコルピョンの次に、立冬の四日間。

 サジテイル、カプリコルヌ、ヴェルソがあって立春の四日間。

 ポアソン、ベリエ、トーロがあって立夏の四日間。

 ジェモ、コンセル、リヨンで終わり、また新しい年が始まる。

 更に月の周期や季節の周期を修正する為に、百十三年に一度閏年があって、その年だけ立秋が一日減る。…けど、まだしばらくその年は来ない。

 今日はベリエの八日。

「いよいよラングリオンだね」

「グラシアルよりは温暖だし、過ごしやすい場所だ」

 船酔い止めの薬が効いているのか、リリーの調子は良いらしい。

 甲板の上から、海を眺めている。

「気持ち良い」

「あんまり近づきすぎると落ちるぞ」

「大丈夫だよ。…どうせ、泡になって消えるだけだ」

「マーメイド?」

「うん。…教えなかったね。マーメイドは、人間の姿のまま海に入ると、泡になって消えるんだ」

「人間になる代わりに、海に帰れなくなる呪い?」

「あぁ。そういう解釈もあるんだね。それなら納得する?」

「…しないな」

「どうして?」

「リリーはマーメイドじゃない」

「試そうか」

 今から、海に入って?

「リリー」

 リリーの体を、後ろから抱きしめる。

「エル?…冗談だよ?」

 わかってるよ。

 そんなこと。

「忘れないって言ってたのに」

「エルの、マーメイドの恋物語?」

「そう」

「…本当に、幸せになれたのかな」

「え?」

「マーメイドって、魚を食べないんだよ?」

「なんだ、その設定」

 どうして、童話や恋愛ものの話しって、有り得ない設定が前面に出てるんだよ。

 最後は絶対に結ばれるのに。

「だって、海の生き物だもん。魚は同じ種族で友達でしょ?そんなマーメイドが、陸に上がって幸せになれるのかな」

「…そうだな。考えておく」

「え?」

「続き」

「恋物語だよ?」

「俺にできないことなんてない」

 魚が食べられないのに、魚を食べる相手と結ばれた後?

 どうにか、幸せな話しにしないと…。

「トリオット物語、読んでみたら?」

 リリーが笑いながら言う。

「リリーはきっと、マリーと気が合うよ」

「マリー?マリアンヌだっけ?」

「あぁ。王都に行ったら紹介するよ。…腐れ縁みたいな奴ばっかりだけど」

「うん」

 いや、紹介しないほうがいい奴もいるな…。

「相当な馬鹿もいるから…。覚悟しておいてくれ」

 リリーが楽しそうに笑う。

「面白い人なんだ」

「ただの馬鹿だ」

 港に着いたら、そのまま南下して街道沿いの街に行こう。そこから馬車に乗れば、王都はすぐだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ