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旧作1-1  作者: 智枝 理子
序章
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序章

 世界の始まりの大陸“神の台座”の南に、オービュミル大陸がある。その西北端に位置する、グラシアル女王国。

 ここ数百年の間に魔法大国として急成長を遂げたこの国は、一人の絶大な魔力を持つ女王によって統治されている。

 女王とは絶対的な支配者であり、女王の治める土地は魔力で満ち溢れ、豊かで、そして魔法使いの聖地であった。その為、女王の魔力を求めた領主が、その支配下に入ることを請う例が後を絶たず、女王は戦わずして広大な土地を手に入れている。

 もちろん、周辺諸国は女王に対して不満や不安を抱いていたが、女王に戦いを挑んだところで、無敵と言われる女王直属の少数精鋭“龍氷の魔女部隊”に、勝てるわけがないのだ。また、女王は、女王となったその日から、北の果ての城から出ることはないといわれ、その命を奪うことも不可能といえる。

 現在、女王国と周辺諸国は、不可侵条約や同盟を結んでおり、良好な関係を築いている。

 特に、魔法や錬金術に関する研究は常に世界の最先端を行くこの国には、多くの魔法使いたちが留学に訪れていることで有名だ。

「あんたも、留学に来たのかい?」

「いや、俺は観光だよ」

 昼間から酒をあおる男に、旅の装束の少年が応える。

「観光ね。どっから来たんだ?」

「ラングリオン」

「東の端から来たのか」

 ラングリオン王国は、オービュミル大陸の東に位置する大国だ。グラシアル女王国との間には、いくつかの国を挟むほど遠い。

「俺に、何か用か?」

「あぁ。俺は情報屋のポール。何か探し物があるなら手伝うぜ」

「探し物、ねぇ」

 少年は、紅茶を口に含む。

「あぁ、頼まれていた古文書があるんだ」

「お。安くしとくぜ」

「銀の棺って言ったかな」

「銀の棺、ね。まかせとけ」

「年代も著者も言ってないぞ」

「当てがあるんだよ」

 ポールは残りの酒を一気に飲むと、立ち上がる。

「あんた、名前は?」

「エルロック。しばらくこの宿に世話になるから、報告はここでしてくれ」

「了解。じゃあな」

 ポールが店を出ていく。

『自分で探せばいいじゃないですか』

 エルロックにだけ聞こえる声が、ささやく。

「投資だよ、投資。使えるなら、他にも頼めるだろ」

『でも、賭けは私の勝ちですよ』

「……」

 グラシアル女王国のおひざ元。白銀のプレザーブ城を臨む大きな城下町に入る少し前。

 エルロックは声の主と賭けをしたのだ。

 街に入ってすぐ、人に声をかけられるだろう、と。

『ね。エルは人に話しかけられやすい』

 そんなつもりは、微塵もないのだが。

 金髪の長いくせ毛をかき揚げながら、エルロックは舌打ちする。

「あいつに、王立図書館の場所、聞いておけば良かったな」



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