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プロローグ
出口の手前で僕は静かにその時を待っていた。人が一人通れる正方形の形をした回廊の先で、目の前にかすかに見えるレフリーの手をずっと見ていた。前の戦いはもう終わったみたいだったから、まもなく僕の出番のはずだ。レフリーがこちらに招くような仕草をしたら、炎天下に出ていかなければならない。レンガでできたこのひんやりした空間からそこへ飛び出すときが僕はあまり好きではなかった。このままここにずっと居れたらいいのにといつも思ってしまう。別に戦うのが嫌いなわけでも、死ぬのが怖いわけでもないのにそう思ってしまうのが不思議だった。
豆粒ほどしか見えなかったが、審判の手が動いた。僕はゆっくりと背中の羽を動かして、光の方へ出た。