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Brave Soul  作者: トム助
1/5

エリュシオン学園

 みなさん、誰だお前?という人ははじめまして。またあっちまったの人はまた会いましたね。どちらの方々も僕の駄作を読んでいただいてありがとうございます。

 ファンタジーは書いたことがありますが、学園物は初めてですし、かなりガチで書いていきたいと思います。前の作品よりもギャグと恋愛関連を豊富に組み込んでいきたいです。

 話がだらだらと続く可能性ありで駄文でしょうがないですが楽しんで下さると光栄です。

「やめるんだ! 君はまだ……」

「いいのよ! これしか…これしか方法がないんだから!」


 今後語り継がれるだろう歴史的大事件が起きた日の夜、怪しい樹海の中で先程までの激戦の傷が生々しく残る男女がやり取りをしている。周りの木々はまるで化け物のようにめらめらと燃え続けている。二人のはるか上空には、見るからにして邪悪そうな黒い穴。一目見てわかるこのただならぬ状況。両者はかなり切羽詰まっているものと思えた。


「そんな身体であの魔法を使ったら、君の方がもたない!」


 男は必死で彼女を止めようとするが、彼女は全く聞く耳を持たない。その瞳には、決意の焔が燃えていた。そして彼女は魔法を唱えるため、全身に残っている魔力を放つための準備を始めた。彼女を中心にして、とてつもなく大きく、清らかな青い魔法陣が浮かび上がる。


「だめだ!」


 男は最後の最後まで大きな声で叫び続けたが、彼自身も傷ついていて、立っている事さえやっとの状況だった。思わず男はふらついてしまう。そして、その間にも彼女は魔力を惜しみなく使った。彼女の魔法はとめる事が出来ない段階にまで来ていた。


「やめろっ! ―――」


 男は彼女の名前を叫んだ。しかし、それは彼女が空に浮かぶ巨大な穴に向かって発動させた魔法により、彼女の耳に届く事はなかった。彼の届かなかった声とは裏腹に、轟音が大地を揺るがし、魔法陣とその付近から何本もの光の柱が穴に向かって伸びていく。それらが穴にぶつかった瞬間、巨大な衝撃波が発生し、人類史上最大の爆発が巻き起こった事を彼らは知らない。











―――ガタン、ゴトン。


 列車が線路の上を走る音で、車内の一席で熟睡していた金髪の美少女、エレナは目が覚めた。まるで輝いているような金色の長い髪、透き通るような白い肌、そして、大きな目に、これまた豊満な胸。まるで絵にかいたような美少女は夢を見ていたようだが、その内容は起きた直後、今まさしく忘れてしまった。

 エレナは何時間も、列車に揺られ続けている。必要最低限の荷物、といっても衣類などを詰め込んでしまうとかなりの量になってしまった荷物達を彼女はぼんやりと眺めた。

 エレナは旅をしているわけではない。ではなぜ大層な荷物を持って、長い時間列車に揺られているのか。ざっくり言うと引っ越しの途中なのである。しかし、ただの引っ越しではない。学園に引っ越すのだ。そしてこれまたただの学園に引っ越すわけではない。魔法学園に引っ越すのだ。エレナはいろいろな事情を抱えて、以前通学していた魔法学園から、今この列車が向かっている『エリュシオン学園』の学園寮に引っ越す。

 

 エレナは『エリュシオン学園』に期待しているわけではない。エレナは車窓に流れる、だんだんと都会染みてきた、景色に目をやった。単刀直入に言うとエレナは前の学校ではいじめられていた。この事実を聞いて、真摯に受け止める者はハッキリ言って少ないはずだ。エレナの容姿、本来の明るい性格からしていじめられる要素はゼロに等しい。

 しかし、一つだけそのいじめられる要素がエレナにはあり、それが最大の悩みであった。それはエレナは魔力があるのにもかかわらず、魔法が全く使えないのだ。魔力があるのに使えない、それは魔法学園で生活していく上では雑魚以外の何者でもなかった。そして、魔法が使えないからお前は使えない、魔法が使えないから必要ない、魔法が使えないから…それだけでいじめの標的にされた。魔力がある限られた人間は、魔法学園に通う義務がある。だから、逃げられなかった。


 彼女が転校した理由、それは前の学校にいると一人の人間として成立出来なくなりそうだったから。そして、いじめのない学園にほんの少しだけ夢見てしまったから。もしかしたらという思いが、期待しないと思いつつも少なからず、エレナの胸の内に居座っていた。しかし、大いに期待しすぎると事実と向き合ったときの傷が深くなってしまう。エレナはそれを知っていたから、期待しないと表面上は装っている。


「あー、腹減った。もう限界だ。バロン、飯くれぇ~」

「それは聞きあきたぞ。オレも腹が減ってるのに、そんなことを言ったら余計腹が減る」


 横の席から声が聞こえてエレナは反射的にビクッとする。彼女が列車に乗った時、人はほとんどいなかったからだ。それはエレナが深い眠りにつく前の話だが。そして、不可解な事がいくつか。聞こえたのは二人の声だがその席を見る限り、座っているのは赤髪の青年一人だけなのだ。男の子らしい声の主はこの青年のようだが、もう一人の凛々しく、きりっとした声の主は誰なのか。その疑問は驚くべき事実により明らかになる。


 ぴょこっと青年が話しかけている方向の窓の淵に、何か生き物が座った。それを見てエレナは目を見張る。


「目的地まで……まだまだ、だな」


 その生き物の口が動くのと同時に、先程の凛々しい声がエレナの耳に届く。エレナのあいた口は、しばらくの間ふさがらなかった。青年は目の前の不思議な生き物にまだ「めしー、めしー」と唸るように言っている。


 その生き物、エレナの大きく見開かれている目が正常に働いているのなら、その生き物はエレナには…この世界にはいると言われているが滅多にお目にかかる事が出来ない、ドラゴンに見えた。エレナはあれは本当にドラゴンなのかと目をゴシゴシとこすったが、その瞳に映る生き物の姿は変わらなかった。バロンと呼ばれたその生き物は、希少生物、ドラゴンなのだろうか。それは魔法を使わずに人間の言葉を話している。二足歩行をして、背丈はエレナの腰ぐらいで、まだ子どもなのか小さい。本当にトカゲに翼が生え、角などがついた、そんな生き物……一言でいえば奇怪。


「……あの女、見てくるな。ロトに気でもあるのか?」

「めしー?」


 エレナは奇怪すぎるドラゴンをじっと見つめてしまったせいか、こんな事を言われて目をそらさずにはいられなかった。その直後、ドラゴンは鼻を小さく動かした後、呟いた。


「飯の臭いがするな」

「飯!?」


 女の子を見て第一声が飯ってなんなのよとエレナは心の中で呟いた。自慢ではないがエレナははこの顔とスタイルに関しては自信を持っていた。

 ロトと呼ばれた赤髪の青年は、先程のだらけた様子とは打って変わって、生気に満ちた表情を浮かべながらドタバタとこちら側へやってくる。


「飯、くれないか? お願いだ。ほんの少しで良いからさ」


 ロトはまるでおやつをねだる子犬のようにせがんでくる。本来このように赤の他人に食べ物を要求するなど無礼極まりないのだが、そんな事をしてもどこか憎めないのが彼らだった。


「まあ、あたしお腹すいてないし、すく予定もたぶんないと思うから……いいわよ」


 エレナは苦笑いを浮かべて、大量の荷物たちの比較的上の方に詰めた、我ながらセンスがあって可愛いと思う弁当箱を取り出した。「はい」とその弁当箱を手渡すと、待ってましたと言わんばかりにロトは弁当をあさるように食べ始めた。それをバロンと呼ばれたドラゴンはまじまじと見つめている。


「うんめーな、これ。お前が作ったのか?」


 他人に自分の手作り料理を食べてもらった事がないエレナにとって、それらの絶賛の言葉が例えお世辞であったとしても正直うれしかった。


 ガタン、ゴトンという規則正しい車輪の音が急に止まり、エレナは前方に座っている彼らに、倒れこみそうになるのをこらえる。目的地、『エリュシオン学園前』に列車が止まった。


「ごめん。あたし、もう行かなきゃ」

「……ん?べんどうばごはいいのが?」

「え?……あ、うん。いいよ。あげる。急いでるから…じゃあね」


 聞き取りにくいロトの返答に少々戸惑いながらも荷物を手に取り、エレナはその場を離れようとした。


「おい、お前名前は?」

「……あたしはエレナ」

「俺はロト。エレナか。うん、良い名前だ。弁当ありがとな」

「うん、美味い」

「あー! バロン、俺の卵焼きとんな!」


 ―――エレナか。うん。いい名前だ


 ロトのその言葉がエレナの頭の中でリフレインする。


「なにボーっと突っ立ってんだ? 列車動くぞ」

「…あ、うん。…ありがとね」


 エレナはロトが「へ?」とわけがわからないという顔をした事を確認して、早足にかけて行った。

いかがだったでしょうか? 

出来れば感想・アドバイス・誤字脱字など小さい事でもいいので下さると嬉しいです。

よろしくお願いします!

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