BLACK ROOM
暗く狭い箱の中
自分の形さえわからない暗闇の中で
背中を丸めて横たわっていた
残酷な時計の針はいつしか消えて
季節は私をおいてった
私はこのまま床へ沈む
深く 深く
もう上がってこれなくなるくらい下へ 下へ
それが私の望むなの
どうか私を呼ばないで
どうか私を忘れて下さい
記憶の中へ行きたくないから
記憶で生きたくないから
きっと私は穢てるもの
この世界の誰よりも
私の両手は真っ赤
私の貌は真っ赤
私の躱は真っ赤
そして一番
私の心が真っ赤
だって
眩しい程輝く銀色の物体が赤へと変わりながら胸の中へおさまっているのだから
だから光なんて当てないでこれ以上 理解なんてしたくないから
嗚呼 どうか
哀れな私を探そうなんてしないで
どうせ アナタも暗闇に堕ちてしまうから
嗚呼 どうか
哀れな私に触れようとしないで
どうせ 私の色を被って闇色に染まってしまうから
私なんかを見つけ出さないで
もう助かりはしないから
どうせアナタは他人でしょう?
私とアナタは違うもの
同情心だけでヒトを助けようとしないで
この胸に飾り付けられた物体で
真っ赤に染まるのはアナタだから
恨みだけでも
憎しみだけでも
人は生きていけるのよ
これが
人を偽って 嘘吐いて
快楽の先で溺れた私の
成れの果て
このどす黒く冷え切った私の世界で
アナタは何を求めるの?
この黒く塗り潰された箱の中で
私の周りで、もう光を浴びることが無くなった残骸共に成りたいの?
アナタがこの箱の鍵を持っていたくらいで
自分に使命があるなんて想わないで
それは単なるアナタの妄想
闇は決して光になんてなれないのよ
いくらアナタが努力しようと
私とアナタとでは住む世界が違うのよ
この枯れ果てた世界で何を望む?
この枯れ果てた空に何を祈る?
この世は残酷で、理不尽で、不平等で
アナタの味方になってくれるものは一つも無い
仕方ないのよ これが現実なのだから
私にはもう 還る場所なんて存在しないのよ
例えアナタが私を連れ出したとしても
光の中で生きていける程 強くなんてないの
もう 生きたくないの
こんな世界で 生きたくないの
私はこのままずっと ここで溺れていたいのよ
この箱から抜け出して
アナタの世界で生きていけると思う?
こんな穢た私を
誰も信じない私を
誰が信じてくれるの?
私はアナタ達を認めない
私はきっとアナタを傷付ける
だって
憎らしいんですもの
その幸せそうな顔が
希望に満ち溢れたその笑顔が
その先にある絶望に背を向けて、受け入れなくて
まるでその感情がずっと続くものだと思い込んでいる
だから 憎らしいのよ
だから私は 喜んで人を傷付ける
この胸のナイフを引き抜いて 笑顔でアナタの赫い血を被ってあげる
痛くなんてないわ
散々人を偽ってきたんだもの
『心』なんて麻痺してて使い物にならないから
ねぇ
私は何の為にこの箱に入ったと思う?
もう外の世界に居たくなかったのよ
もう何も知りたくなかったこれ以上 私を知りたくなかったんだよ………ッ!!
アナタなんかに何がわかる?
この恐怖が空漠が虚無が
アナタにわかるわけないでしょう
出てってよ
私の世界から出てってよ!
アナタが出ていかないと言うのなら
仕方ないわ
私はまた、アナタの血で一段と赫く染まってあげる
一度付いてしまったシミは拭えないのなら
とことん 汚してやる
サヨナラ
赫く染まったナイフを引き抜き
より一層鮮やかになる様にアナタの胸へ
アナタが悪いのよ
私の世界を踏み躙ったから
「大…丈夫、大丈…夫だ…よ」
何を…言っているの?
来ないでよ 私に触れないでよ
もう人の温もりなんて知りたくないから
離してよ………ッ!
「泣かない…で」
アナタは私の頬に触れ 涙を拭う
お願いだから触らないでよ
激しく脈打つ アナタの鼓動と温もりが
私を揺さ振る
そして
急激に落ちてゆく脈と体温
ああ……あぁッ!!
全身を駆け巡る激痛
ホラ
アナタは私を助けることが出来なかった
アナタは私に罪を与えた
皆そうだった
ここにいる屍は皆そうして死んでった
何も出来ずに
私を残して
うわ―――――ッ!!!
暗く狭い箱の中
独りの少女が赫い赫い涙を流した
憎しみの涙を
絶望の涙を
はじめまして。または、お久しぶりです。今回は詩っぽくなってしまいました。それにまた長く・・・
今度は反省して短くしたかったのですが。でも、ここまで読んでくださってありがとうございました。