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蹴り飛ばせ! 恋するカエル姫は愛しの王子様の元へと蹴り進む!!  作者: 功野 涼し


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新しい体と大きい家

 ━━しとしとと降る雨が私の皮膚に当たって流れていく感触に違和感を覚えた私は目を開ける。視界はぼんやりと白いモヤがかかっていて、すぐ近くには草と土がやけに小さく見えた。


 ぼんやりとした目に雨が入り視界がぼやけてしまう。段々と戻ってくる意識と体の感覚だけどなんだかおかしくてうまく手足に力が入らない。


 しばらくもがいたあと、ようやく動いた手で顔についた雨粒を拭こうとして自分の手がいつもと違うことに気づく。


 何が起きたのか分からず戸惑う私の耳に足音が響く。それが鉄を着た人間が歩く音だと気づけたのはカエルだったときよく聞いていたから。

 動かないと踏みつぶされる、そう思ったけど動かない体をどうすることもできず、せめて気づかれないようにと息を潜めるしかなかった。


 だけど無常にも足音は私の方へと向かってきてすぐそばで止まってしまう。視線を感じるが石や土と同化するため息を止める。


 そんな抵抗もむなしく私の手に何かが触れる。暖かくてゴツゴツした感触に覚えがあった私は顔を上げると見たことのある人が目の前にいて私のことを見ていた。


「立てるかい? 手を貸そう」


 私は耳から聞こえてきた言葉の意味が理解できたことに驚きを覚えつつ、目の前にあった手を掴んでしまう。自分の手なのに手じゃないような不思議な感覚に戸惑いながら引っ張られた私は後ろ脚で立つ。


「⁉」


 後ろ脚だけで立つ不安定さにプルプル震える私は体を支えきれずに倒れてしまう。


「おっと。無理に立たせて申し訳ない」


 優しい声が倒れそうになった私を支えてそのまま抱えてくれる。


「王子、どこの馬の骨とも分からない者に触れるなどおススメいたしませんな」


「そのようなことを言うな。魔物に襲われたのかもしれないのだぞ」


「他国には人に擬態する魔物もいるとの噂もございます。安易に触れるのは危険だと申しているのです」


 言い合いを始める三人のことよりも一人の声に私は反応する。それは何度も私に話しかけてくれた声……心地よい音。


「き……」


 何かを伝えたいけど頭の中に色んな音が渦巻いて、なんと声に出していいか分からなくて、言葉に詰まった私に王子と呼ばれた人が優しく触れる。


「無理して話さなくていい。ひとまず今はここから出よう」


「まさか連れて帰るおつもりですか?」


「お前はこの方をここに置いて帰るというのか?」


「そ、それは……」


 まだ言い合う三人は私を背負ってくれた王子を中心にして歩き出す。仲間に背負われて移動するなんて経験のない私は王子の上でどうしていいか分からずもぞもぞすると、王子は少しだけ顔を振り返って私に声をかけてくれる。


「私の背中は居心地悪いだろうけど我慢してくれるかい? それとも知らない人間に背負われるのは嫌だったかい?」


 嫌じゃなかった私はなんとなくそうするのが正しいと思ったから首を横に振る。


「そうか、ならいいんだが。嫌なことは嫌だと言ってもいいからね」


 王子の言葉に残りの二人が小言を言うが、私はそんなことを気にせずに遠慮なく王子の背中に引っ付くことにする。揺られながら進む風景は今まで見た視線よりも遥かに高く何もかもが新鮮だった。

 ふと王子の肩に伸びる自分の腕を見て王子の腕と似ているなと思いながらも、今はそんなことよりも王子に引っ付いていることに一生懸命になる。


 温かい感覚を体で感じながら私は王子の家にたどり着く。今まで見たこともない大きな建物を見上げる私を興味深そうに見る王子と目が合う。


「初めて見たみたいな反応だ。きみはアボンド王国の出身じゃないのかな」


「お、王子……」


「ん? どうしたんだい?」


 私は頭の中に浮かんだ音が言葉であることを認識して口に出すと、王子が反応してくれて言葉が通じたことに嬉しくなる。


「これ王子の家?」


「そうだが」


「スゲー! でかーい! どこで寝る? 餌ある?」


 私が思ったことを口に出すと王子は目を丸くして驚くがすぐにお腹を押さえて笑い出す。私はなんで笑っているのか分からず王子を見つめていると、別の二人が近づいてきて両手を掴まれ王子から離される。


「なんと、はしたないおなごだ」


「王子に近づくでない」


 腕を抱えられてじたばたする私を二人の男が力を入れて押さえようとするので、イラっとした私が蹴ろうと足に力を入れるがそれよりも先に王子が二人の男の手を掴む。


「そう邪険に扱うな。その子は記憶がなくて混乱しているんであって悪気があったわけではないだろう」


「そ、そうはおっしゃいますがあまりにも無礼な物言い。このような女は何をするか分かりませんぞ」


 王子に対して意見をする男ともう一人の男がいきなり手を離すので、バランスを崩した私がよろけると王子が支えてくれる。


「まったく王子は甘いですな。こらっ! そこの女! 自分の力で立たぬか!」


 敵意を含んだ声を向けてくる男だが私と目が合うと男は不機嫌そうな顔でにらんでくる。敵意むき出しの視線を遮るように王子が移動して、私に目線を合わせてくれる。


「使用人を手配するから服や髪を整えてもらうといい。そのままじゃ風をひく、それに怪我をしてちゃいけないからね」


 使用人とかよく分からないけど、王子が優しく語りかけてくれるので安心した私は頷くが、やっぱりよく分からないままでっかい城と呼ばれる家に連れて行かれる。

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