第90話 国家という選択
即位の日。
空は晴れていた。
だが王都の空気は張り詰めている。
大広間には重臣、貴族、商会代表、北方同盟使節、南方連盟代表が並ぶ。
王位は空白ではなくなる。
王太子が進み出る。
冠は軽くない。
沈黙の中、宣誓が響く。
「私は王国を統べる」
「失敗を隠さず」
「制度を退けず」
「責任を逃れぬ」
短い。
だが明確。
冠が載せられる。
拍手は控えめ。
祝福というより確認。
新王が生まれた。
即位直後。
第一の決裁。
北方同盟への返信。
「国境再画定要求は拒否」
「監視団常駐は拒否」
「ただし共同監査団を期間限定で受け入れる」
対等条件。
譲歩ではない。
対話の枠。
第二の決裁。
臨時軍事指定発動。
北方即応権限を第二王子へ付与。
期限付き。
王の署名入り。
第三の決裁。
市場安定策発動。
穀物備蓄放出。
信用保証拡大。
公開監査体制の恒久法制化。
制度は終わらない。
続く。
北方代表エルヴァーンは静かに言う。
「王は決まった」
短い。
だが十分。
軍旗はその夜、わずかに後退した。
南方連盟代表リヴィアは言う。
「市場は反応する」
為替は緩やかに戻り始める。
凍結の一部解除が通達される。
城下。
暴動は収束。
不安は残る。
だが方向は定まった。
夜。
王宮の静かな回廊。
新王はリリアーナに言う。
「私は王になった」
「はい」
「怖い」
正直な言葉。
「だが逃げぬ」
彼女は静かに頷く。
「制度が支えます」
「いや」
新王は首を振る。
「共に支える」
その言葉に、迷いはなかった。
第二王子は軍務棟へ向かう。
レオンは財務報告を整理する。
セラフィナは評議会文書を閉じる。
制度は続く。
だが王もいる。
国家という選択は、均衡ではなく覚悟だった。
王位は確定した。
だが物語は終わらない。
外圧は完全には消えていない。
市場も不安を忘れていない。
それでも。
王が責任を引き受けた。
制度が持続を約束した。
第7章、終。
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