第88話 持続か即断か
期限まで八日。
王太子は三日以内の即位を宣言した。
だが、その夜。
第二王子が私的会談を求めた。
場所は小会議室。
出席は三名。
王太子。
第二王子。
レオン。
そして、制度設計監査室長リリアーナ。
静かな空間。
第二王子が口を開く。
「兄上の即位に反対はしない」
穏やかだが真剣な声。
「だが条件がある」
王太子は目を向ける。
「軍事判断の即応権限を、私に委ねよ」
沈黙。
「王が全てを抱えれば、速度が落ちる」
「北方は待たぬ」
合理。
正しい。
レオンが低く言う。
「分権は王権を削る」
「削るのではない」
「補完だ」
第二王子の声は静かだが強い。
「私は打つ」
「兄上は統べる」
役割分担。
王太子は考える。
即位。
市場安定。
だが軍事権限分離。
リリアーナの胸がざわつく。
これは共同統治に近い。
制度的には安定。
だが。
王権の象徴性は薄まる。
「兄上」
第二王子が続ける。
「北方は私を知っている」
「私が前面に立てば、牽制は効く」
事実。
エルヴァーンとの接点。
軍事実績。
王太子はレオンを見る。
「どう思う」
レオンは短く答える。
「合理だ」
「だが」
「王は象徴だ」
象徴が分割されれば、混乱する。
沈黙。
全員の視線が、リリアーナへ向く。
彼女は一瞬目を閉じる。
持続か。
即断か。
分権は持続を高める。
だが王の強さは揺らぐ。
「王太子殿下が即位し」
ゆっくりと言う。
「軍事即応権限は委任ではなく、臨時指定制に」
第二王子が眉を上げる。
「恒常分権ではない?」
「はい」
「危機時のみ」
「王の指名により発動」
王権は保つ。
だが速度も確保する。
制度的妥協点。
数秒の沈黙。
王太子が言う。
「それでいく」
決断。
第二王子は小さく笑う。
「兄上は変わった」
レオンは静かに頷く。
「私は補佐を続ける」
明確な宣言。
均衡は終わった。
だが崩壊ではない。
再設計。
夜。
リリアーナは一人、窓辺に立つ。
制度は曲がった。
だが折れていない。
持続と即断の間に、道を作った。
だが。
北方は待たぬ。
市場も待たぬ。
即位まで三日。
国家は、最後の段階に入った。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




