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第85話 期限まで十二日

 城下の暴動は、翌日さらに広がった。


 穀物商の倉庫前で衝突。


 兵が出動。


 死者は出ていない。


 だが不安は確実に拡大している。


 市場は敏感だ。


 南方連盟は即座に動いた。


 対王国短期融資の一部停止。


 小規模だが象徴的。


 為替がさらに揺れる。


 円卓室。


 財務卿が報告する。


「凍結は本気だ」


「段階的と言ったが、初動は早い」


 期限まで十二日。


 第二王子が静かに言う。


「即位宣言を」


 王太子は沈黙。


 レオンは地図と財務報告を並べる。


「即位だけでは足りない」


「市場は体制を見る」


 セラフィナが問う。


「体制とは」


「権限の明確化」


 レオンは続ける。


「軍事は第二王子」


「財務は既存体制」


「制度監査は継続」


 役割明示。


 構造で示す安定。


 大公は低く言う。


「王権が薄まる」


「今は薄くても持続する方が強い」


 王太子が顔を上げる。


「私が王になる」


 初めて明言。


 空気が止まる。


「だが、私は独断しない」


 短い沈黙。


 第二王子が視線を向ける。


「独断できぬ王は弱い」


「独断しない王は強い」


 王太子の声は静かだが揺れない。


 だが。


 会議後。


 回廊でリリアーナは立ち止まる。


 心がざわついている。


 制度は守れる。


 だが。


 即位を急がせているのは外圧。


 これは“選ばれた”王か。


 “追い込まれた”王か。


 レオンが声をかける。


「迷っているな」


「はい」


 初めて、即答できなかった。


「私は制度を守りたい」


「だが今は即位が合理かもしれない」


 レオンは静かに言う。


「合理は短期だ」


「制度は長期だ」


「両立できるか」


 問い。


 答えが出ない。


 その時。


 使者が駆け込む。


「北方軍、さらに前進」


 防衛線まで二里。


 期限まで十二日。


 北方は動き。


 市場は凍り。


 城下は揺れ。


 王は未確定。


 リリアーナは初めて思う。


 ――間に合わないかもしれない。


 制度が、国家の速度に追いつかない。


 その感覚が、胸を締めつけた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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