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第79話 軍部の圧

 北方国境。


 追加軍旗、五。


 演習規模拡大。


 報告は早朝、王宮へ届いた。


 円卓室に緊急招集がかかる。


 王太子、第二王子、レオンも同席。


 軍務卿が低く告げる。


「これは牽制を超えている」


「威圧だ」


 地図が広げられる。


 北方同盟の配置は、防御線ではない。


 前進可能な陣形。


 第二王子が即座に言う。


「抑止配置を倍増」


「即応部隊を南回りで展開」


 反射的判断。


 軍部が頷く。


 王太子は問う。


「外交接触は」


「時間稼ぎにしかならない」


 第二王子の答えは速い。


 レオンが静かに言う。


「情報は足りない」


「実戦準備か示威か、確証がない」


 沈黙。


 速度か、精査か。


 セラフィナが口を開く。


「制度上、緊急軍事判断は継承評議会対象外」


 王が決める領域。


 だが。


 王はまだ決まっていない。


 室内の空気が重くなる。


 大公が言う。


「摂政権限を暫定付与するか」


 爆弾。


 王太子か。


 それとも。


 第二王子か。


 レオンか。


 三者の視線が交差する。


 リリアーナは、息を吸う。


 ここが制度の限界。


 平時設計は機能する。


 だが危機は待たない。


「暫定単独権限は危険です」


 彼女は言う。


「三者合議による即時対応を提案します」


 軍務卿が眉をひそめる。


「速度が落ちる」


「情報精度は上がる」


 レオンが続ける。


「即応部隊準備は進める」


「だが実行命令は三者一致」


 第二王子が静かに笑う。


「遅い」


「だが合理的だ」


 王太子は数秒考え、


「合議でいく」


 決断。


 三者は別室へ移る。


 短時間の協議。


 結果。


 即応部隊準備開始。

 外交接触同時進行。

 情報収集強化。


 全面展開は保留。


 軍部の一部は不満を漏らす。


「第二王子なら即断した」


「王太子は慎重すぎる」


 一方。


 商会代表は安堵する。


「全面戦争は回避された」


 城下にも緊張が走る。


 そして夜。


 第二王子がリリアーナに言う。


「あなたは速度を削った」


「持続を守りました」


「もし北方が本当に攻めたら」


 問い。


「その時は、即断します」


 迷いはない。


 だがその瞬間はまだ来ていない。


 レオンは静かに言う。


「今日の合議は成功だ」


「だが次はどうだ」


 危機は一度では終わらない。


 継承評議会は揺れている。


 王位は未決。


 北方は圧を強める。


 理論と現実が、真正面から衝突した。


 そして均衡は、さらに不安定になる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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