第78話 北方帰りの実績
継承評議会第五回。
本日の議題は「軍事判断妥当率の検証」。
第二王子が前に立つ。
穏やかな笑みは変わらない。
だが机上には、北方滞在中の報告書が積まれていた。
「北方三侯との共同演習において」
「兵站再編を提案しました」
資料が配られる。
従来三日かかっていた物資輸送が、二日に短縮。
演習時の負傷率低下。
費用対効果も改善。
軍務卿がわずかに目を見開く。
「これは現地で主導したのか」
「はい」
「助言を受けつつ、最終判断は私です」
明確。
実績。
続けて第二王子は言う。
「北方同盟の動向は単純ではない」
「力を示せば退くが、弱さを見せれば試す」
視線が円卓を巡る。
「王は抑止を理解すべきだ」
強い言葉。
若手騎士団席がざわつく。
軍部の一部が頷く。
セラフィナが問う。
「抑止と挑発の境界は」
「誤認を避ける情報公開」
「だが軍事配置は柔軟に」
合理的。
理論と実務の両立。
評価は高い。
討議後。
暫定軍事判断妥当率は三者中トップ。
王太子は沈黙。
レオンは目を伏せる。
回廊。
第二王子がリリアーナに並ぶ。
「兄上は理念を得た」
「彼は合理支持を持つ」
「私は現実を示す」
穏やかな声。
「三人とも必要だろう?」
問いではない。
確認。
「国家には複数の資質が必要です」
リリアーナは答える。
「ならば」
第二王子はわずかに笑う。
「単独王制は時代遅れかもしれない」
静かな爆弾。
共同統治の示唆。
夜。
軍部の若手将校たちが集まる。
「第二王子は現場を知っている」
「即断できる」
支持が拡大する。
一方。
城下では王太子の公開告白が語られ、
商会ではレオンの安定性が語られる。
三者三様。
支持は分散し、拮抗。
制度設計監査室。
ルークが言う。
「完全三竦みです」
「はい」
リリアーナは静かに頷く。
ここまでは想定内。
だが。
均衡は永遠ではない。
外圧が加われば、崩れる。
そしてその兆しは、すでに北方国境に現れていた。
遠く。
軍旗が増えているという報告。
北方同盟は、ただの演習ではない。
三者が並ぶ今こそ。
国家は試される。
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