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第77話 王太子の過去

 継承評議会第四回。


 議題は危機対応能力の実例検証。


 だが開会直前、王太子が発言を求めた。


「評価前に、一つ公開したい記録がある」


 室内が静まる。


 王太子は一通の古い書類を机上に置いた。


「三年前の港湾税制改定」


 空気がわずかに変わる。


 あの時。


 急進的な改定案が商会を混乱させた。


 実行責任者は王太子。


「私は当時、財政改善を急いだ」


「結果として流通停滞を招いた」


 誰もが知る失策。


 だが公式に“失敗”と認めたことはない。


「本来は段階的移行が妥当だった」


「だが私は速度を選んだ」


 視線が円卓を巡る。


「今回の評価項目に照らせば、危機対応能力は未熟だった」


 自ら減点する。


 ざわめき。


 大公が静かに言う。


「殿下、それは必要か」


「必要だ」


 即答。


「制度が私を測るなら」


「私も自分を測る」


 沈黙。


 セラフィナの目が細まる。


「改善策は」


「事前影響分析制度を導入した」


「現在は段階移行原則を採用」


 リリアーナが記録を確認する。


 事実。


 あの失策以降、制度は改善された。


 第二王子が穏やかに言う。


「兄上は過去を武器にした」


 皮肉ではない。


 事実だ。


 レオンは無言。


 だが視線は動かない。


 王太子は続ける。


「私は完璧ではない」


「だが、失敗を隠さぬ」


 城下で響いた言葉と重なる。


 “失敗を隠さぬ王”。


 それはレオンの発言だった。


 だが今、王太子が体現している。


 討議後。


 暫定評価は変動した。


 王太子の制度遵守適合率が上昇。


 危機対応項目も再評価。


 市民支持層の一部が動く。


 夜。


 回廊。


 レオンが静かに言う。


「やられたな」


「はい」


 リリアーナは小さく頷く。


「理念を取られた」


 だが奪われたわけではない。


 理念が分散した。


「兄上は変わった」


 第二王子の声が背後から響く。


「そして私は、動かなければならない」


 穏やかな笑み。


 だが目は鋭い。


 リリアーナは気づく。


 均衡が再び中央に戻り始めた。


 レオン一強になりかけた流れが、修正された。


 王太子は安定だけではない。


 理念も持ち始めた。


 数字にできないものが、動いた。


 そして。


 誰も決定的ではなくなった。


 玉座は、再び霧の中に入る。

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