表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/102

第75話 中立の議長

 円卓室は、静かだった。


 本日は非公開。


 出席者は三名。


 評議会議長セラフィナ。

 制度設計監査室長リリアーナ。

 そして記録官のみ。


 扉が閉まる。


「あなたに確認がある」


 セラフィナが言う。


 声は穏やか。


 だが逃げ場はない。


「あなたは制度を守ると言う」


「はい」


「では答えて」


 間。


「レオンが最も安定的と評価された場合」


「王太子が僅差で劣る場合」


「あなたはどちらを支持する」


 直球。


 理念ではなく、具体。


 沈黙。


「私は支持しません」


「制度が判断します」


 即答。


 だがセラフィナは微笑む。


「制度は人が作る」


「基準も、配点も、公開範囲も」


 視線が鋭くなる。


「あなたが設計した」


 逃げ道が消える。


「あなたは無色ではない」


「私は均衡を設計しました」


「均衡は選択だ」


 言葉がぶつかる。


 セラフィナは続ける。


「あなたは王太子を成長させた」


「同時にレオンを残した」


「第二王子にも舞台を与えた」


「それは介入ではないの?」


 胸が、わずかに軋む。


 否定できない。


 制度を作ること自体が、政治。


「私は最小限です」


「最小限の介入で最大の安定を」


 セラフィナは小さく息を吐く。


「最小限でも方向はある」


 沈黙。


 やがて、議長は静かに言う。


「制度の限界を理解している?」


「はい」


「どこ」


 数秒。


「非常時です」


「危機下では、評価も公開も揺らぐ」


「その時、誰が決断する?」


 問いは深い。


 制度は平時に強い。


 だが戦時は。


「王です」


 リリアーナは答える。


「ならば」


 セラフィナの声が低くなる。


「制度で王を縛りすぎれば、危機で国が遅れる」


 核心。


 王を透明化すれば強くなるのか。


 弱くなるのか。


 迷いが生まれる。


 ほんの一瞬。


 それをセラフィナは見逃さない。


「今、揺れた」


「……揺れます」


 初めて明確に認める。


「制度は万能ではありません」


「だが無制度よりは強い」


 議長はゆっくり頷く。


「あなたは正しい」


「だが、正しさは王にならない」


 静かな一撃。


 夜。


 回廊。


 リリアーナは一人で歩いていた。


 制度は均衡を作る。


 だが最終的に決断するのは人。


 もし。


 北方が動けば。


 もし。


 連盟が資金を引けば。


 その時、誰が即断する。


 王太子か。


 第二王子か。


 レオンか。


 足音。


 振り返るとレオン。


「顔色が悪い」


「少し考えています」


「制度か」


「はい」


 沈黙。


「制度は道具だ」


 レオンが言う。


「王は道具ではない」


 単純な言葉。


 だが重い。


「あなたは王を守ろうとしている」


「私は国家を」


「同じだ」


 断言。


 リリアーナは目を閉じる。


 制度は万能ではない。


 王も万能ではない。


 だが。


 両方が必要。


 中立の議長は、揺らぎを残した。


 制度の限界は見え始めた。


 次に試されるのは――


 理論ではなく、現実だ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ