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第74話 辞退できない候補

 第二回公開討議の翌日。


 軍務卿補佐室の扉は閉ざされていた。


 中には、レオンと数名の老将。


「殿下」


 老将が口を開く。


「支持は明確になりました」


「我らは国家の安定を望む」


 レオンは黙って聞く。


「辞退は軽率です」


「それは責任放棄に等しい」


 静かな圧力。


 レオンは低く言う。


「私は王を望まぬ」


「望むか否かではない」


「担えるかどうかだ」


 再び同じ言葉。


 老将は続ける。


「王太子殿下は成長されている」


「だが時間が必要だ」


「今は不安定だ」


 理屈は通っている。


 だからこそ重い。


 会議後。


 レオンは制度設計監査室へ向かった。


 リリアーナは書類から目を上げる。


「決めましたか」


「辞退する」


 即答。


 だがその目は硬い。


「正式に評議会へ申し出る」


 沈黙。


 それは政治的爆弾だ。


「軍部は反発します」


「承知している」


「経済連盟も動きます」


「それでもだ」


 レオンは静かに言う。


「私は王の横に立つ者だ」


「玉座に座る者ではない」


 迷いはない。


 だが。


「あなたは」


 低く問う。


「どう思う」


 その問いは、政治ではない。


 個人への問い。


 リリアーナの胸がわずかに締まる。


 答えは簡単ではない。


 辞退すれば。


 王太子有利。


 第二王子有利。


 だが。


 国家の評価構造は揺れる。


「辞退は」


 ゆっくりと言う。


「あなたの意思です」


「だが制度の意思ではありません」


 レオンの眉がわずかに動く。


「続けろ」


「あなたの支持は、構造支持です」


「合理層があなたを選んだ」


「辞退すれば、制度が信頼を失います」


 冷たい。


 だが事実。


「では」


 レオンの声が低くなる。


「私は制度のために残れと?」


 沈黙。


 数秒。


「はい」


 はっきりと。


「あなた個人ではなく」


「国家の均衡のために」


 空気が止まる。


 レオンは目を閉じる。


 苦笑が漏れる。


「あなたは容赦がない」


「整えるだけです」


 震えはない。


 だが心は揺れている。


 夜。


 評議会臨時会合。


 レオンは辞退の意思を表明する。


 だが。


 セラフィナが静かに言う。


「辞退は認める」


「ただし、三候補が並ぶ状態が最も安定している」


 大公も言う。


「今、辞退は政治的偏りを生む」


 王太子は沈黙。


 第二王子は微笑む。


「兄上が成長する時間を、奪うことになる」


 静かな牽制。


 レオンは、しばらく考え、


「……留保する」


 辞退は保留。


 三角は維持された。


 回廊。


 レオンが言う。


「私は残る」


「国家のためだ」


 視線が合う。


「あなたのためではない」


 わずかな強がり。


 リリアーナは小さく息を吐く。


「承知しています」


 だが。


 胸の奥が静かに痛む。


 彼を残らせたのは、自分だ。


 玉座はまだ空いていない。


 だが。


 辞退できない候補が、そこに立ち続ける。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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