第73話 公開される資質
第二回継承評議会は、円卓室ではなく大講堂で開かれた。
重臣に加え、選抜された貴族、商会代表、学院教授が列席する。
公開討議。
民意の代替手段。
セラフィナが告げる。
「本日は危機対応能力および説明責任を評価する」
候補者は壇上に並ぶ。
王太子。
第二王子。
レオン。
まず提示されたのは仮想事例。
――北方で軍事衝突発生。
――同時に南方交易停滞。
――国内で穀物価格高騰。
「優先順位を述べよ」
沈黙。
王太子が先に答える。
「国内安定を最優先」
「穀物価格抑制策を即時発動」
「北方は抑止を強化し交渉」
安定型。
聴衆の一部が頷く。
第二王子。
「北方を即時牽制」
「強硬姿勢を示し外圧を退ける」
「南方は関税一時緩和で対応」
攻勢型。
軍部席からわずかな支持の気配。
レオン。
「情報収集を優先」
「北方の真意を確認」
「国内は備蓄放出で時間を稼ぐ」
実務型。
現実的。
討議が始まる。
学院教授が問う。
「説明責任とは何か」
王太子。
「決断理由を公開すること」
第二王子。
「結果を示すこと」
レオン。
「失敗を隠さぬこと」
その一言に、ざわめきが走る。
公開監査の流れを受けた発言。
討議後、列席者に意見票が配られる。
直接得票ではない。
“信頼できる判断者は誰か”という選択。
集計は非公開だが、傾向は伝わる。
王太子――安定支持層。
第二王子――若手貴族・軍部支持。
レオン――商会・学院から高支持。
想定外だったのは、レオンへの支持の質。
商会代表マルコが後に言う。
「彼は数字を理解している」
学院長も言う。
「説明が簡潔だ」
支持が“合理層”に集中している。
回廊。
レオンは顔をしかめる。
「これは望まぬ流れだ」
「はい」
リリアーナは短く答える。
「あなたの支持は、構造支持です」
軍部だけではない。
経済、学術。
国家中枢層。
「辞退すべきか」
低い声。
だが辞退は逃避とも取られる。
「辞退は政治的意味を持ちます」
「残っても持つ」
沈黙。
一方。
王太子は結果報告を聞く。
「レオンが最も安定評価」
苦笑が漏れる。
「当然だ」
だが目は静かだ。
第二王子は微笑む。
「兄上は守り、彼は整え、私は動く」
「面白い構図だ」
夜。
セラフィナがリリアーナに言う。
「あなたの計算外はどれ」
「ありません」
「嘘ね」
鋭い。
「レオンへの支持は想定以上」
沈黙。
「あなたは揺れない?」
問い。
リリアーナは、わずかに息を吸う。
「揺れます」
小さく認める。
「だが、基準は揺らしません」
制度は公平でなければならない。
それが彼女の矜持。
だが。
支持の流れは、確実にレオンへ傾きつつある。
三者の差はまだ僅差。
だが。
“公開される資質”は、数字以上の力を持ち始めていた。
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