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第71話 資格の基準

 王位継承評議会は、王宮西棟の円卓室で開かれた。


 重厚な扉が閉まると、外のざわめきは遮断される。


 集まったのは七名。


 大公クラウディウス。

 軍務卿。

 財務卿。

 南方交易連盟の代表マルコ。

 王立学院長。

 そして――


 評議会議長、セラフィナ・グラント。


 淡い灰の衣装。

 感情を読ませない眼差し。


 最後に、制度設計監査室長リリアーナ。


 王太子、第二王子、レオンは別室待機。


 本日は「基準」だけを決める。


 セラフィナが静かに口を開く。


「本評議会は、血統を否定しない」


「だが、即位資格は評価可能とする」


 低く澄んだ声。


「本日決めるのは三点」


 一、評価項目。

 二、公開範囲。

 三、最終決定手続。


 大公が言う。


「血統は前提だ」


「順位を覆す制度には反対する」


 マルコが続く。


「順位は維持してよい」


「だが信用は数値で示せ」


 財務卿がうなずく。


「財政適合率は必須」


 軍務卿は低く言う。


「危機対応能力も」


 セラフィナが視線を巡らせる。


「では提案を」


 沈黙の後。


 リリアーナが口を開く。


「五項目評価を提案します」


 一、財政健全性理解度

 二、軍事判断妥当率

 三、外交交渉安定指数

 四、制度遵守適合率

 五、危機対応速度と持続性


 数字化できる部分は数値化。


 できない部分は記録化。


 大公が問う。


「民意はどう扱う」


 重い問い。


 リリアーナはわずかに間を置く。


「直接投票は行いません」


「だが公開討議と意見集約は行う」


 セラフィナが補足する。


「王は選挙で選ばれぬ」


「だが説明責任は負う」


 議論は三時間に及んだ。


 最大の衝突は、第四項目。


 制度遵守適合率。


 大公が言う。


「王が制度に縛られすぎれば、決断が遅れる」


 リリアーナは静かに答える。


「縛るのではありません」


「例外行使の記録を義務化するだけです」


「王が例外を使う時、それが公開される」


 室内が静まる。


 王を透明化する。


 前例の少ない設計。


 セラフィナがゆっくりと言う。


「強い王は、公開を恐れない」


 最終的に五項目は承認された。


 公開範囲は「重臣・連盟代表・一定の貴族層」まで。


 最終決定は――


「継承順位を尊重する」


「ただし重大な適格性欠如が証明された場合、再審議」


 血統は守られる。


 だが絶対ではない。


 会議が終わる。


 回廊。


 セラフィナがリリアーナに並ぶ。


「あなたの提案は大胆ね」


「現実的です」


 淡々と返す。


「王を制度に入れるとは」


「制度外の王は、いずれ制度を壊します」


 短い沈黙。


 セラフィナが小さく笑う。


「あなたは王を守る気がないのね」


「国家を守ります」


 即答。


 別室。


 王太子は報告を聞く。


「制度遵守適合率」


 小さく呟く。


 自ら選んだ公開監査。


 今度は王位そのものが評価対象。


 第二王子は穏やかに言う。


「面白い舞台だ」


 レオンは低く言う。


「私は辞退できないのか」


 「辞退は可能」との回答。


 だが辞退すれば政治的意味を持つ。


 玉座は、もはや血統だけのものではない。


 資格が言語化された。


 次は、評価だ。


 円卓の上で決められた基準は、


 やがて人を測る刃になる。


 そしてその刃は、


 誰に最も深く触れるのか。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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