第68話 外からの視線
公開監査報告が王宮内で共有されてから、十日。
思わぬ場所から書簡が届いた。
差出人――南方交易都市連盟。
王国と交易を行う、六都市の緩やかな連合体。
「……視察団の派遣要請」
ルークが読み上げる。
「制度設計監査体制の実地確認を希望」
室内が静まる。
国内向けに始めた公開監査が、国外の関心を引いた。
「連盟は商業国家です」
リリアーナが言う。
「透明性は信用に直結する」
つまり。
この制度が評価されれば、王国の信用は上がる。
逆に。
不備が露呈すれば、格好の攻撃材料。
夕刻。
重臣会議。
大公が静かに言う。
「連盟は利で動く」
「この体制が安定と見れば、支持に回る」
「だが揺らぎと見れば、距離を取る」
王太子は頷く。
「受け入れる」
即答。
「隠すものはない」
レオンが一瞬だけ視線を上げる。
迷いはない。
一方。
回廊で、低い噂が流れる。
「第二王子殿下が帰国するらしい」
「北方留学から?」
「この時期にか」
噂は小さい。
だが確実に広がる。
第二王子。
現在は北方諸侯のもとで軍学を学ぶ。
王位継承順位は第二位。
政治には関与していない。
はずだった。
夜。
レオンが言う。
「外が動き始めた」
「はい」
リリアーナは即答する。
「国内の揺らぎは、必ず外に伝わります」
「第二王子の噂は」
「偶然ではありません」
誰かが動かしている。
保守派か。
外部勢力か。
それとも。
「あなたは」
レオンが低く問う。
「誰が最も危険だと思う」
沈黙。
「揺らぎそのものです」
即答。
「人ではなく、構造」
第二王子が戻れば、選択肢が増える。
増えれば、派閥が生まれる。
派閥が生まれれば、国家は揺れる。
翌日。
王太子は書簡を見つめている。
交易都市連盟の視察。
第二王子帰国の噂。
公開監査体制。
全てが交差する。
「私は」
小さく呟く。
「選ばれるのか」
それとも。
選ぶのか。
一方。
制度設計監査室。
リリアーナは、新たな報告書を作成していた。
国外向け説明資料。
監査体制の理念。
目的。
限界。
隠さない。
飾らない。
整える。
外からの視線は、厳しい。
だが。
その視線に耐えられるかどうかが、
本当の試験。
玉座は揺れている。
だが。
揺れは、今や王宮の外へと広がり始めた。
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