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第54話 席次の意味

 三日後。


 ルミエール使節団との正式晩餐が開かれた。


 外交問題は観察期間に入り、表向きは和やかだ。


 だが――


 席次表が配られた瞬間、王宮内に小さなざわめきが走った。


 中央上座――国王エルドリック。


 右手に王太子。


 左手にルミエール代表レナード。


 そして。


 王太子の右隣ではなく、


 レオンの隣に、


 リリアーナ・フォン・アルヴェイン。


「……」


 ルークが思わず息を呑む。


 補佐官席ではない。


 正式列席。


 名札が置かれている。


 後方管理室代表として。


 王宮内で、席は言葉より重い。


 誰の隣に座るか。


 誰の視界に入る位置か。


 それが序列を示す。


 王太子の視線が、わずかに動く。


 だが、何も言わない。


 晩餐が始まる。


 国王が、穏やかに口を開いた。


「今回の件、迅速な再均衡に感謝する」


 低く落ち着いた声。


「整える者がいる国は強い」


 一瞬、視線がリリアーナへ向く。


 直接名を呼ばない。


 だが、誰のことかは明白だった。


 レナードが応じる。


「貴国の説明は合理的でした」


「特に工程再設計は興味深い」


 再び視線。


 王太子は杯を持つ手を止める。


 その言葉は、自分に向けられていない。


 レオンが、低く言う。


「工程は常に改善対象です」


 さりげない補足。


 だが。


 隣に座るリリアーナの存在が、発言の重みを増す。


「……席は落ち着かないか」


 レオンが小声で問う。


「少し」


 正直な答え。


「だが、逃げません」


 静かな覚悟。


「逃がさない」


 短い返答。


 そのやり取りを、向かいのレナードが見ている。


 口元がわずかに上がる。


 晩餐後半。


 国王が、穏やかに問う。


「アルヴェイン嬢」


 初めて、名を呼んだ。


「今後、同様の事案を防ぐには」


 会場が静まる。


 リリアーナは立ち上がらない。


 座ったまま、簡潔に答える。


「速度と確認の再均衡」


「定期的横断監査の制度化」


「責任を個人ではなく設計に帰すこと」


 過不足ない答え。


 国王は小さく頷く。


「よい」


 それだけ。


 だが、重い。


 王宮内で、国王が直接評価を示すのは稀だ。


 王太子は、黙って杯を置く。


 晩餐が終わる。


 廊下に出たとき、


 数名の重臣が、自然にリリアーナへ軽く頭を下げた。


 以前はなかった動き。


 レオンが並んで歩く。


「席は意味を持つ」


「はい」


「今日、あなたは後方ではなかった」


 少しだけ沈黙。


「ですが、役割は変わりません」


「それでいい」


 彼の声は穏やかだ。


 一方、王太子は回廊の奥で立ち止まる。


 席次。


 視線。


 国王の問い。


 自分が中心ではなかった夜。


 外交問題は解決へ向かっている。


 だが。


 王宮内の構図は、


 静かに再配置されていた。


 席は、ただの椅子ではない。


 それは力の形。


 そして今、


 整える者は、


 確実に前へ進んでいた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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