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第41話 新補給改革案

 王宮定例会議。


 王太子は、いつもより早く口を開いた。


「補給制度の再改革案を提出する」


 室内の視線が集まる。


「西部軍管区の件は、処理の遅滞が原因だ」


 誰も反論しない。


 だが、それは本質ではない。


「承認段階を簡略化する」


「倉庫間の横断確認は削減」


「数値目標を設定し、処理速度を最優先」


 合理的に聞こえる。


 迅速。


 効率。


 削減。


 言葉だけを見れば、正しい。


「目標達成率は毎月公開する」


 重臣の一人が問う。


「横断確認を削れば、再発の危険は」


「現場の裁量に任せる」


 即答だった。


「責任者を明確化することで、緊張感を持たせる」


 レオンは、無言で資料を読む。


 速度を上げる。


 だが、流れの監視は減らす。


 整備よりも競争。


「異論は」


 王太子の視線が、室内を巡る。


 沈黙。


 表面上は合理的だ。


 反対するには、具体的な失敗例が必要。


「……承認とする」


 軍務卿が、低く言う。


 改革案は、正式に通った。


 午後。


 後方管理室。


 新制度の概要が届けられる。


「……承認段階が半分に」


 ルークが、紙面をめくる。


「横断確認は原則不要」


 バルドが、静かに言う。


「速度優先、ですか」


 私は、資料を読む。


 数値目標。


 月次達成率。


 処理件数ランキング。


 競わせる設計。


「どう思いますか」


 ルークの問い。


「合理的です」


 二人が顔を上げる。


「速度は必要です」


「でも」


「ただし」


 私は、資料を閉じる。


「流れを監視しない速度は、割れます」


「割れる?」


「圧が一点に集中します」


 承認が早くなれば、責任が偏る。


 横断確認を削れば、盲点が増える。


「……反対しますか」


「しません」


 即答だった。


「なぜですか」


「決定されたからです」


 淡々とした答え。


「整える側は、決定を前提に動きます」


 王太子の改革は始まる。


 止めない。


 止められない。


 夕刻。


 レオンが訪れる。


「通った」


「承知しています」


「反対しないのか」


「必要がありません」


「破綻する可能性がある」


「あります」


 迷いなく言う。


「ならば」


「自分で崩れる流れは、止められません」


 レオンは、しばらく黙る。


「崩れると分かっていて」


「はい」


「なぜ黙る」


 私は、ゆっくり答える。


「記録が必要だからです」


 制度の破綻は、記録される。


 感情ではなく。


 数字で。


「……冷静だな」


「整える役目です」


 レオンの目が、わずかに細くなる。


「あなたは、どこまで見ている」


「流れだけです」


 王太子は、速度を選んだ。


 だが速度は、常に負荷を生む。


 負荷は、やがて歪みになる。


 そして歪みは――


 必ず、表に出る。


 静かな崩れは、

 もう始まっていた。

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