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第29話 守られるべき部署かもしれない

 王宮上層部の会議は、淡々と進んでいた。


 予算再配分。


 人員整理。


 無駄の削減。


「次に、後方管理室の縮小案について」


 書記官が読み上げる。


「人員を二名削減、業務の一部を中央管理室へ統合」


 王太子は、軽く頷いた。


「妥当だろう。裏方に人を割きすぎている」


 室内の何人かが視線を落とす。


 反対する者はいない。


 そのとき。


「異議があります」


 静かな声が、会議室に落ちた。


 軍務卿補佐官レオン・ヴァレンティ。


 王太子が、わずかに目を細める。


「理由は」


「現状、後方管理室の処理安定度は王宮内で最も高い」


「偶然だろう」


「偶然ではありません」


 レオンは、資料を差し出す。


「差し戻し率、処理時間、補給費誤差率。三ヶ月連続で改善」


 数字は、客観的だ。


「統合すれば、再び滞ります」


「中央管理室を侮辱しているのか」


「いいえ」


 即答。


「業務の性質が異なります」


 王太子は、椅子にもたれる。


「裏方は、表の指示に従えばよい」


「流れは、指示だけでは整いません」


 静かな反論。


「現場の連続性が必要です」


 数秒の沈黙。


 他の重臣たちが、資料をめくる。


「縮小すれば、赤字が再び増える可能性が高い」


 レオンは、淡々と続ける。


「現時点での削減は合理的ではありません」


 王太子の指が、机を軽く叩く。


「そこまで言う理由は何だ」


「王宮の安定のためです」


 個人名は出さない。


 後方管理室の誰も出さない。


「功績は、殿下の方針の結果として報告されています」


 わずかな皮肉。


 だが声色は変わらない。


「であれば、現状維持が最も方針に沿っています」


 論理で封じる。


 感情は挟まない。


 室内の空気が、微妙に変わる。


「……縮小は保留とする」


 最終的にそう告げたのは、軍務卿だった。


 王太子は、不満を隠さないが、押し切れない。


「再検討だ」


 短い言葉。


 会議は次の議題へ移る。


 だが、その場の数名は理解していた。


 後方管理室は、守られた。


 少なくとも、今は。


 会議後、廊下。


「随分と肩入れするな」


 王太子が、レオンに声をかける。


「合理性です」


「裏方に情が移ったか」


 レオンは、わずかに目を細める。


「流れを壊すのは損失です」


「……気をつけろ」


 王太子は低く言う。


「裏方は裏方だ」


「承知しています」


 短い応答。


 だが、譲らない。


 その頃。


 後方管理室では、いつも通り帳簿がめくられていた。


「……縮小案、どうなるんでしょう」


 ルークが、小声で言う。


「まだ決まっていません」


 私は、淡々と答える。


 何も知らない。


 会議の内容も、誰が発言したかも。


 ただ、仕事を続ける。


 流れを整える。


 それだけ。


 だが、その静かな仕事の裏で。


 誰かが、立場を使って守っていることを。


 私は、まだ知らない。


 守られるべき部署かもしれない。


 その判断は、すでに下されていた。


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