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第100話 王の資格

 「北方、正式使節派遣要請」


 その報が届いた瞬間。


 王は、迷わなかった。


「受ける」


 即答。


 回廊にいた全員が一瞬だけ息を止める。


 だがその迷いのなさが、空気を動かした。


「場所は王宮」


「公開ではなく、限定会談」


 指示が続く。


 速い。


 第二王子が並ぶ。


「軍はどうする」


「動かさない」


 短く。


「だが見せる」


 意味は明確。


 戦う意思はある。


 だが先に動かない。


 レオンが言う。


「市場は」


「同時に動かす」


 王は止まらない。


「連盟へ通知」


「交渉進展を前提に、凍結解除の段階実行を要求」


 財務卿が頷く。


 連盟は動く。


 必ず。


 利益が見えるから。


 そして。


「評議会も同時だ」


 空気が再び張り詰める。


 内と外。


 同時処理。


 円卓室。


 大公、アルノー、評議員たちが揃う。


 王は正面に立つ。


「北方との会談を行う」


 ざわめき。


「その前に」


 王は続ける。


「王権制限法案について」


 沈黙。


 先にこちらを処理する。


 主導権を握る動き。


 大公が目を細める。


「早いですな」


「遅れれば意味がない」


 王は言う。


「結論を出す」


 アルノーが言う。


「評議会は必要です」


「王の誤りを正すために」


 王は頷く。


「同意する」


 室内が揺れる。


 だが次の言葉で止まる。


「だが方法を変える」


 リリアーナが息を呑む。


 来る。


「承認制ではなく、監査制とする」


 静寂。


「決断は王が行う」


「だが全て記録され、公開される」


 レオンが低く言う。


「……逃げ場をなくすか」


「はい」


 王は認める。


「誤れば、すぐに露見する」


「修正は制度が担う」


 アルノーの目が大きく開かれる。


 これは。


 理想に近い。


 だが。


 同時に。


 王への圧も最大になる。


「受けるのですか」


 思わず漏れる。


 王は静かに答える。


「責任を負うと言った」


 その一言で終わる。


 沈黙。


 長い沈黙。


 やがて。


 大公が小さく笑う。


「……見事だ」


 認めた。


「この形なら、法案は不要」


 アルノーもゆっくり頷く。


「監査が機能するなら」


「我々の目的は果たされる」


 対立が解ける。


 完全ではない。


 だが。


 戦いは一つ終わった。


 リリアーナの胸が強く鳴る。


 制度が、王を支えた。


 そして王が、制度を使った。


 同時に。


 扉が開く。


「北方使節、到着」


 空気が変わる。


 外の戦場。


 王は振り向く。


「通せ」


 短い。


 エルヴァーン・ロシュが入る。


 静かに。


 だが確実に。


「王」


 一言。


「代表」


 王も返す。


 対等。


 交渉が始まる。


 リリアーナは一歩後ろに立つ。


 もう迷いはない。


 この王なら。


 戦える。


 だが。


 エルヴァーンの目は鋭い。


「貴国は変わった」


 静かな言葉。


「だが」


 一拍。


「どこまで持つ」


 試されている。


 最後まで。


 王は微笑まない。


「試してみろ」


 短い返答。


 戦いは終わらない。


 だが。


 王の資格は、ここに示された。

第8章の大きな山を越えました。


王が「制度に守られる存在」から

「制度を使う存在」に変わった瞬間です。


ここからは最終決着フェーズに入ります。


北方との交渉がどう転ぶのか。


ぜひブックマークと評価で応援してもらえると嬉しいです。

次話、かなり重要な決着回になります。

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