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第6話|既読の扱い
朝、メッセージ欄に未読はなかった。
それでも、何かが届いていた感覚だけが残っている。
一覧には表示されない。
通知も鳴っていない。
だが検索履歴には、今朝の時刻で一件の参照が記録されていた。
内容は取得できない。
件名も、送信者も空欄のまま。
状態だけが「既読」となっている。
彼は設定画面を開いた。
既読は、開封操作によって付与される仕様になっている。
自動処理では付かない。
操作ログを確認しても、
自分が開いた形跡は残っていなかった。
昼過ぎ、システムから軽い確認が入った。
「当該メッセージは処理済みです」とだけ表示される。
処理内容は省略されていた。
削除はできない。
未読に戻す項目もない。
保留に回す選択肢も表示されなかった。
夕方、同じ形式の既読メッセージが、もう一件増えた。
数は増えているが、
受信箱の表示は変わらない。
彼は一瞬、
何かを見落としたのではないかと考え、
すぐにその考えを閉じた。
見落としがあったなら、
本来は警告が出る。
定時になり、
既読メッセージはまとめて「確認済み」として整理された。
彼は端末を閉じた。
何を読んだのかは分からないが、
読むべきものは読まれた扱いになっている。
帰宅後、ふと思い出したように端末を開くと、
既読数はゼロに戻っていた。
履歴だけが、
確かにそこに残っていた。




