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第5話|保留の期限
午後、システムから一件のリマインドが届いた。
件名は短く、「保留中の項目について」とだけ書かれている。
該当する項目はすぐに分かった。
先週から、処理も却下もされず、そのまま置かれている案件だ。
期限欄には日付が入っていない。
代わりに、状態として「有効」と表示されている。
彼は履歴を遡った。
誰も判断していない。
しかし誰も止めてもいない。
保留理由の欄は空白のままだった。
入力必須ではないらしい。
夕方、再度リマインドが届いた。
文面は同じだが、送信元の署名が微妙に違っていた。
どちらも実在しない部署名だった。
彼は一度、期限を入力しようとして、やめた。
期限を入れると、判断が発生する。
判断が発生すると、責任の向きが定まる。
定時処理の時間になり、
その項目は自動的に「継続保留」に更新された。
期限は設定されないまま、
有効期限だけが一日延長されていた。
彼は端末を閉じ、席を立った。
今日も何かを決めなかったが、
システム上は、正しく運用されている。
帰り際、もう一度だけ確認した。
リマインドは、明日も届く予定になっていた。
その表示には、解除方法が載っていなかった。




