48/54
第48話|説明の不存在
朝、起動画面に小さな表示が追加されていた。
「状態:説明不要」
表示は淡く、
注意を引く色でもない。
だが消えることもない。
彼は一覧を開く。
更新時刻は整然と並び、
補足や理由の欄は見当たらない。
午前中、いくつかの処理が進む。
承認も完了も、
一行の記録だけで終わる。
昼前、新しい担当者が
「説明って、もう書かないんですね」と言う。
彼は画面を見たまま答える。
「必要がないらしい」
午後、基準文書を開く。
本文は短く、
脚注も例示もない。
末尾に一文だけ残っている。
「運用は説明を必要としない」
誰に対してかは書かれていない。
夕方、ログを確認する。
更新は続いている。
説明欄は最初から存在していない。
定時、端末を閉じる。
処理は進行している。
判断も行われている。
だが理由は残らない。
説明が存在しないことが、
最初からの仕様になっている。




