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第47話|定義の削除
朝、基準文書の更新通知が届いていた。
件名は短く、「整理」とだけ書かれている。
彼は文書を開く。
章の数が減っている。
説明文の多くが削除されていた。
残っているのは、
短い見出しと
いくつかの状態表示だけだった。
午前中、業務は通常通り進む。
処理は自動的に記録され、
「最適維持」の表示は変わらない。
昼前、新しい担当者が
文書を見ながら言った。
「前より読みやすくなりましたね」
彼は頷いた。
何が消えたのかは確認しない。
午後、検索欄に
いくつかの語を入力してみる。
「例外」「揺らぎ」「確認」
どれも該当なしと表示される。
夕方、ログを開く。
更新は続いている。
説明欄は空白のままだ。
定時、端末を閉じる。
定義は整理された。
整理されたことが通知されている。
何が定義されていたのかは、
どこにも残っていない。




