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第42話|名の削除
朝、一覧の表示形式がわずかに変わっていた。
更新時刻の右側にあった担当者名が消えている。
空白は埋められていない。
列自体が存在しない。
彼はログを開く。
記録は時刻順に並んでいるが、
操作主体の欄は見当たらない。
午前中、処理は自動的に進む。
完了の表示は出ない。
差し戻しも発生しない。
昼前、新しい担当者が
「履歴、簡潔になりましたね」と言う。
彼は「見やすくなった」と答える。
誰が何をしたのかは、
話題に出ない。
午後、基準文書を確認する。
末尾に小さく追記がある。
「責任は運用全体に帰属します」
個人名の記載はない。
夕方、検索欄に自分の名前を入力してみる。
該当なしと表示される。
以前の記録も表示されない。
削除通知は届いていない。
定時、端末を閉じる。
業務は進行している。
判断も完了も存在している。
だが、名は残らない。
名が残らないことが、
正常の形式になっている。




