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第37話|検出不能
朝、起動後の画面に
小さな表示が追加されていた。
「状態:検出不能なし」
語順に一瞬だけ違和感がある。
だが読み直すと、意味は通る。
彼は処理一覧を確認する。
全件が同じ状態に分類されている。
警告も補正も表示されない。
午前中、一件の入力で
数値が範囲外に逸れた。
目視では明らかだった。
だが画面は変わらない。
警告は出ない。
そのまま完了処理に進む。
ログを開く。
該当箇所には
「検出対象外」と記録されている。
昼前、新しい担当者が
「何か、表示が減りましたよね」と言う。
彼は画面を見つめたまま答える。
「表示する必要がなくなったんだと思う」
午後、基準文書を検索する。
「検出」という章は存在しない。
代わりに「統合管理」という項目がある。
夕方、一覧を再確認する。
全件が安定している。
揺らぎは見当たらない。
定時、端末を閉じる。
検出不能は発生していない。
発生していないことが、
前提になっている。
何が検出されなかったのかは、
記録されないまま。




