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第35話|完全適合
朝、一覧の最上部に新しい表示が追加されていた。
「状態:完全適合」
すべての案件が、その状態に含まれている。
個別の評価は表示されない。
数値も、区分もない。
彼は一件を開く。
入力欄は最小限で、
確認ボタンは一つだけ。
押すと、
画面は即座に完了表示へ切り替わる。
午前中、処理は滞りなく進む。
確認は不要。
差し戻しも発生しない。
昼前、新しい担当者が言った。
「もう判断って、ほとんどしていませんよね」
彼は少しだけ考え、
「していることになっている」と答えた。
午後、基準文書を開く。
内容は簡潔で、
例示も注釈もない。
「基準は常に満たされる」と
一文だけが記されている。
夕方、ログを確認する。
全件が同一形式で記録され、
補正や調整の表示はない。
定時、端末を閉じる。
今日は間違いがなかった。
違和感もなかった。
適合は、前提ではなく状態になった。
外れる可能性は示されず、
示されないことが
自然になっている。




